時事テーマから斬る自治体経営 「DX」の注意点

コロナ禍で社会が激変する中、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」という言葉が使用される頻度も、2020年頃から急激に増えた。地方自治体も今、DXに積極的に取り組むべきなのだろうか?まずはDXの背景、DXとは何かについてきちんと把握し、方向性を見定めることが大切だ。

急に「DX」という言葉(概念)が社会全体に浸透しつつある。地方自治体も何となく無視できない状況に置かれている(自治体の場合は「浸透」ではなく「浸食」に近い気がする)。

DXとは「Digital Transformation」の略である。DはDigitalであり、X はTransformationである。読者は「Transformationであり『T』が頭文字なのに、なんでXなのか」と疑問を持つだろう。実はTransformationのTransには「交差する」という意味がある。そこで交差を1文字で表す「X」が用いられている(自治体職員や地方議員は意外に知らない)。

DXは筆者の専門ではない。そこでDXの基本と、筆者が気になることを言及する。本稿は問題提起という意味をこめてDXを検討する。

DXの前夜

DXは突如として登場したのではない。DXに向けた動きはあった。DXに関連する概念は、数年前から出てきている。例えば、オープンデータやビックデータ、AI、RPA、IoTやGIGAスクール構想などがある(余談だが、筆者は「IoT」を見るたびに、顔文字の泣く[(ToT)]を思い浮かべてしまう。次から次へと仕事が増えて自治体の現場は泣いている実情がある)。

そして菅義偉総理はデジタル・ガバメントを推進する組織として「デジタル庁」の創設を提起した。デジタル庁の存在がDXの議論を強くした一要因でもある。デジタル庁とは、2021年9月1日に設置予定の行政機関である。国・地方行政のIT化やDXの推進を目的としている。IT分野を担当する省庁である。

デジタル・ガバメントについて、政府CIOポータル(https://cio.go.jp/)では「デジタル技術の徹底活用と、官民協働を軸として、全体最適を妨げる行政機関の縦割りや、国と地方、官と民という枠を超えて行政サービスを見直すことにより、行政の在り方そのものを変革していくこと」と定義している(CIOとはChief Information Officer」の略称であり、一般的には最高情報責任者を意味する。自治体や民間企業の情報戦略における最高責任者のことを指す)。

図表1では、オープンデータやビックデータ、AI、RPA、IoTやGIGAスクール構想の意味を簡単にまとめている。

図表1 デジタル・ガバメントに関連する用語

出典:筆者作成

 

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