日本型スマートタウンの構築 カギは先端技術+コミュニティ

自治体だけでなく、企業による取り組みも進むスマートシティ。大手メーカーのパナソニックは国内外でSDGsも視野に入れたまちづくりを行う。同社ブランド戦略担当参与・事業構想大学院大学 教授の竹安聡氏が日本マーケティング協会の講演で同社の取り組みについて語った。

竹安 聡(パナソニック ブランド戦略担当参与、事業構想大学院大学 教授)

まちを起点にサービスを
提供し続けるビジネスを構築

パナソニックがスマートシティを手がけたのは、"住宅を中心とした郊外型複合スマートタウン"として2014年にまちびらきをした神奈川県藤沢市の〈Fujisawa サスティナブル・スマートタウン〉(Fujisawa SST)が最初。同プロジェクトは、1961年から2009年まで稼働したパナソニック藤沢工場の跡地が活用されており、更地にまちをつくる、いわゆる"グリーンフィールド型"の開発事例だ。

竹安氏は「藤沢工場は、長らく藤沢市の協力のもと運営してきました。工場がその役目を終えた後も、まちづくりというかたちでの地域貢献を目指し、2010年に藤沢市と基本構想を合意しました」と説明する。

2012年の事業発表会では、社長の津賀一宏氏が"Fujisawa SSTは大きなチャレンジ。つくって終わりではなく、進化するまちづくりを目指す"とコメント。メーカーとして売り切りのビジネスモデルから、さまざまなサービスを提供し続けるビジネスモデルへの転換を宣言した。

2014年のまちびらき以降、今では約2000人が生活するまちへと進化した〈Fujisawa SST〉。パナソニックを筆頭に三井物産、東京ガス、NTT東日本など9社が出資し2013年に設立されたFujisawaSSTマネジメント株式会社が、"100年進化し続ける街"をコンセプトにエネルギー、モビリティ、健康・見守り、セキュリティ、コミュニティの5つの視点で各種サービスを提供している。Fujisawa SSTには1000戸の一般住居のほか、健康福祉施設、教育施設、ウェルネス施設、高齢者向け施設など、多種多様な施設を整備。まち全体でCO2 70%削減、生活用水30%削減、再エネ利用率30%以上、ライフラインの確保3日間といった目標を掲げるほか、次世代物流センター・ネクストデリバリースクエアでタウン内の二次配送を一元化。環境負荷の低い配送体制の構築も進める。

さらに同社では、SSTの第2弾として横浜市綱島地区に"多用途施設が連携した都市型スマートタウン"、〈Tsunashima SST〉を2018年にオープン。さらに、2022年春のまちびらきを目指し、大阪府吹田市に"多世代共生型の健康スマートタウン"〈Suita SST〉の計画を進めている。

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