コロナ後を見据えた地方創生政策 臨時交付金で強靭な地域経済へ

内閣府は、感染症にも経済危機にも強い自律的な地域経済の構築に向けて、地方創生臨時交付金の活用促進や、地方創生SDGsの推進、「スーパーシティ」構想などの幅広い施策に取り組んでいる。地方創生推進事務局長の眞鍋純氏が最新の取り組みを解説する。

地域の実情に合せて
自由度の高い交付金を活用

コロナ禍で疲弊した地方をいかにして活性化すべきか。

アフターコロナを見据え、実効性のある地方創生政策が求められるなか、内閣府地方創生推進事務局長の眞鍋純氏は「令和2年度第1次補正予算で1兆円、第2次補正予算で2兆円の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を確保しました。地域の実情に応じて必要な事業に柔軟に充てることができるよう、自由度の高い仕組みにしました」と説明する。

眞鍋 純 内閣府 地方創生推進事務局長

第2次補正予算分については、①事業継続等への対応と、②「新しい生活様式」等への対応という2つの観点からそれぞれ1兆円の交付額を算定した。

①事業継続等への対応分については、当面の事業継続や生活・雇用の維持、一時的な感染症対策等に関する事業を対象としている。

② 「新しい生活様式」等への対応分については、3密対策などの「コロナに強い社会環境整備」、教育・医療などの「新たな暮らしのスタイルの確立」、観光などの「新たな付加価値を生み出す消費・投資の促進」といった観点からの事業を想定している。

「地域未来構想20」の
推進を多角的に支援

感染症にも経済危機にも強い、強靱かつ自律的な地域経済の構築に向けて、内閣府は自治体が地方創生臨時交付金を活用して取り組むことが期待される20の政策分野を「地域未来構想20」として例示した。さらに、これらの取り組みを推進するためには、各分野に関心のある自治体、各分野の課題解決に向けたスキルを有する専門家(民間企業等を含む)、関連施策を所管する府省庁の連携が重要だと考え、三者の連携を図るための官民プラットフォーム「地域未来構想20 オープンラボ」を開設した。

図 地域未来構想20

出典:内閣府地方創生推進室資料

 

眞鍋氏は「自由度の高い本交付金を活用するとともに、各分野の専門家とのパートナーシップの形成、既存施策や他の補助金との連携、他分野の施策との相乗効果の追求などを強め、取組の歯車をかみ合わせていくことが重要です。関心分野や提供可能な技術・ノウハウ等をご登録いただくことで、パートナーとのマッチング機会が増えますので、ぜひ積極的にご活用ください」と強調する。

あわせて、内閣府では臨時交付金の活用事例や活用状況を広く紹介する「地方創生臨時交付金ポータルサイト(地方創生図鑑)」を公開。好事例の見える化と横展開を図るほか、「地域未来構想20 オープンラボ」等を通じたマッチング事業等が紹介される予定だ。

臨時交付金ポータルサイト「地方創生図鑑」

SDGsを原動力に地方創生を

持続可能なまちづくりや地域活性化に向けて、内閣府はSDGs(持続可能な開発目標)を原動力とした地方創生を推進している。SDGsでは、気候変動対策など17のゴールが設定されており、これらを共通言語として活用することで、異なるステークホルダー間で地方創生の課題解決が一層促進されることが期待されている。

自治体によるSDGsの取り組みを進めるためには、先進事例の普及展開が必要となる。そこで内閣府は、2018年度から自治体によるSDGsの達成に向けた取り組みを公募し、すぐれた取り組みを提案する都市を「SDGs未来都市」として93都市選定。そのうち特に先導的な取り組みを「自治体SDGsモデル事業」として30事業を選定し、補助金等により支援している。眞鍋氏は「人口減少など自治体が抱える課題の解決はSDGsの考え方と一致することから、自治体間でも関心は高まっているものの、実際に推進している自治体は2019年度時点で全体の13%に留まります。これを2024年度末までに60%に引き上げることを目指し、推進を支援していきます」と話す。

また、SDGsの国内推進を促進するため、自治体・企業・NPO・大学など広範なステークホルダーとのパートナーシップを深める官民連携の場として、「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を設置した。2020年11月末時点で、会員数は3861団体に到達しており、内閣府ではマッチング支援や分科会の設置などにより、さらにこの動きを強めていく考えだ。

地方創生SDGs官民連携プラットフォーム

2020年10月には地方創生SDGsに積極的に取り組む地域事業者等を「見える化」する仕組みづくりを支援するため、「地方公共団体のための地方創生SDGs登録・認証等制度ガイドライン」を取りまとめ、公表した。今後は地域の金融機関などから資金調達で優遇されるなど新たな動きに繋がることが期待される。

「スーパーシティ」の実現で
社会のDXを推進

スーパーシティの実現に向けた準備も進められている。眞鍋氏は「2020年6月3日に公布された改正国家戦略特区法により、データ連携基盤の整備と大胆な規制改革を併せて行い、複数分野の最先端技術を都市と暮らしに実装する『スーパーシティ』構想を推進しています。SDGs推進と同じく、スーパーシティの実現に向けても官民の連携が欠かせません」と話す。

2019年8月、内閣府は企業が構想に関連する知見や技術を展示するSNS上のバーチャルブース『スーパーシティ・オープンラボ』を開設し、登録団体は204に達した(2020年11月30日時点)。2019年9月から実施している自治体アイディア公募では、現時点で57団体からアイディアが寄せられている。今後は「国家戦略特別区域基本方針」に沿って、2020年内に区域指定の公募を行い、2021年春頃に区域が決定される予定だ。

内閣府は令和3年度概算要求において、感染症克服と経済活性化の両立の視点を取り入れ、DXを推進しつつ地方創生への取り組みを強化するべく、これに資する予算を重点的に要求した。特に、コロナ禍で広がったテレワークを地方創生に結びつけ、さらに加速化するという観点から新しい交付金制度の創設を予定している。地方への新たなひとの流れを創出する自治体のサテライトオフィスの整備等を支援する方針だ。また、地方大学の産学連携強化と体制充実や、「スーパーシティ」構想の推進にも注力していく。