マリンナノファイバー 廃棄物のカニ殻を新たな地域資源に

鳥取県はカニの水揚げ量が日本一。むき身加工に伴い廃棄されていた殻に目を付けたのが、鳥取大学の伊福氏だ。殻に含まれるキチンからナノファイバーという極細繊維を抽出し、研究を続けつつ大学発ベンチャーを起業した。地域活性化に貢献したいという、その想いとは。

伊福 伸介(株式会社マリンナノファイバー 代表取締役社長 鳥取大学工学研究科化学生物応用工学専攻 教授)

カニ加工の廃棄物が
機能性成分の原料に

新型コロナの感染予防のために手洗いや消毒を繰り返した結果、肌荒れに悩むようになった人は少なくないだろう。そんな今注目されているのが、鳥取大学発のベンチャー企業、マリンナノファイバーが業務上の手荒れに悩む人々をターゲットに製造販売しているアルコール配合のハンドジェル、「ハンドジェルプロ」だ。最大の特徴はカニの殻や甲羅に含まれる「キチン」という物質が配合されていること。極細の繊維状になったキチンが皮膚表面に薄い被膜を作り、外部刺激や雑菌の侵入を防ぐ効果や、保湿効果を発揮する。

鳥取県西部の境港では、ベニズワイガニをむき身にして冷凍食品などに加工する際、これまで大量の殻が廃棄されてきた。しかし、同社はこれを活用しキチンを抽出しており、ゴミの山を宝の山に変えたと言える。同社代表で鳥取大学教授の伊福氏は、かつて京都大学生存圏研究所で、木材由来のセルロースナノファイバーという新素材の開発に携わっていた。

鳥取県境港市はベニズワイガニの水揚量全国1位。同社は廃棄されるカニ殻からキチンを抽出している

「2008年に鳥取大学への赴任が決まった時に、京都で蓄積してきた知見を活かして何か"鳥取らしい仕事"をしたいと思い、カニ殻の成分であるキチンに目をつけました。というのも、キチンの化学構造がセルロースと似ていたからです。キチンは粉末にしただけでは水に溶けませんが、キチンナノファイバーという極細繊維としての抽出に成功したことで、水に均一に分散し、用途の幅を大きく広げることができました」と伊福氏は語る。

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