坂村健氏が語る、スーパーシティ・都市OSとアーキテクトの要件

スーパーシティで提供されるサービスの根幹となる"都市OS"と、そこで機能するシステムやサービスを統括する責任者である"アーキテクト"。都市OSに求められるものと、アーキテクトの役割について、DXの専門家で有識者委員でもある東洋大学の坂村健教授に聞いた。

デジタル時代の都市の
"基本機能"とは

AIやビッグデータなどを活用し、自動運転やキャッシュレス、遠隔医療といった最新テクノロジーによるサービスを実装する都市の実現を目指す〈スーパーシティ構想〉。

本構想ではスーパーシティを単なるスマートシティ以上の未来都市と定義し、移動や物流、支払い、行政、医療・介護、教育、エネルギー・水、環境・ゴミ、防犯、防災・安全といった10領域のうち、少なくとも5領域をカバーし、生活全般にまたがる都市サービスを提供するものとしている。

つまり、スーパーシティに実装されるべきサービスは個別分野に閉じたものではなく、分野横断的なものでなければならない。そのためには、さまざまなデータを分野横断的に活用できるプラットフォーム"都市OS"が必要となる。東洋大学教授の坂村健氏は、プラットフォームの概念を、パソコン(PC)のOS(基幹ソフト)に例えて説明する。

坂村 健(東洋大学情報連携学部教授、東京大学 名誉教授)

「PCに付属するマウスやキーボードは、PC内のアプリケーション(アプリ)すべてで使えます。これは、マウスやキーボードといった基本的な機能をどのアプリでも共通して使えるように設計されているからです。スーパーシティにおけるプラットフォーム"都市OS"も同じで、都市の基本的な機能を提供する基盤となります」

都市の基本機能を"監視カメラ"を例に考えてみると、これは防犯だけでなく交通量調査など他の目的にも使うことができる。つまり"街中をモニターする"ことが基本機能であり、それを防犯用、交通量調査にと個別の目的で考えることはアプリレベルの話なのだ。

「都市の基本機能(監視カメラ)とサービス(防犯や交通量調査)は、分けて考えなくてはなりません。都市に入れる基礎機能とは、防犯にも統計データ取得にもさまざま応用できるレベルのものを指します。◯◯をしたい、というのは基本機能を決めてからの話で、個別の要望から考えていてはコストがかかります」

企業におけるDXでも、機能をひとつの部署に閉じてしまえば、似たような機能を各部署に作らなければならなくなる。皆が必要とする機能を開放することで、都市運営のコストは大きく下がる。機能を開放してさまざまなサービスに応用するための仕組みがAPIだ。APIは民間企業や市民にも公開することで、コスト低減だけでなく、イノベーション創発につながることも期待される。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り60%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。