2020年7月号

地域特集 栃木県

研究員として地域の未来を構想 とちぎ創生プロジェクト研究

新井 将能(NEZASホールディングス 代表取締役社長)

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今、求められるのが、新しい事業をつくり、地域をよりよく発展させる構想ができる人材だ。事業構想大は、NEZASホールディングス、下野新聞社と連携して栃木県で教育プログラムを実施。企業・自治体から集まった研究員が、勤務先の枠を超えて交流し、それぞれのプランを練った。

事業構想大学院大学は、NEZASホールディングス、下野新聞社と連携して、「とちぎ創生プロジェクト研究」を2018年秋~2019年秋まで実施した。栃木県の社会人を対象にした新しいプログラムで、地域や企業の課題に「事業構想」の視点で取り組むもの。地域の活性化につながる、持続可能な事業を構想することを目指した。栃木県を舞台にしたこの取組から、新しい動きが生まれつつある。

若手・中堅社会人の教育を地元で

NEZASホールディングスは、栃木トヨタ自動車と福島トヨタ自動車から設立されたホールディングカンパニーで、地方創生に向けた様々な事業を展開している。下野新聞社は、本社を宇都宮に置く地方新聞社。栃木県のシェアトップの新聞として、独自の視点の報道に力を入れている。また報道以外でも、地元の小中学生の学習支援サービスの構築や、常設ニュースカフェの開設などの新しい取組で、21世紀の地方新聞の在り方を模索してきた。

両社は、学生を対象にした教育プログラム提供では協力してきた実績があった。2017年から夏休みに実施している高校生向けの「課題発見力特別ワークショップ」などだ。さらに上の年齢層を対象とした「とちぎ創生プロジェクト研究」は、若年~中堅社会人を対象としたプログラムとして、初めての試みとなった。

栃木県は首都圏からのアクセスが良く、宇都宮から新幹線を使えば、50分で東京駅に着く。都内で開催される様々なセミナーにも日帰りで参加できるし、社会人向け大学院も通学圏内だ。このような場所で、社会人の学びに対する需要がどれだけあるのかは未知数だった。一方、身近に新規事業について考える機会が存在することは、将来のプレイヤーを増やす上では確実にプラスになる。

NEZASホールディングス社長の新井将能氏は、「まずはやってみようと、仮説を検証する実験のような側面もありました」と振り返る。

NEZASホールディングス代表取締役社長の新井 将能氏。事業構想大学院大学では客員教授として、「事業構想特論-人間の探求-」を担当

様々な業種から集まった研究員

2018年4月には、プロジェクトのキックオフを下野新聞で広く告知した。県内から参加者を募集し、企業・自治体などで勤務する11人が事業構想大事業構想研究所の「プロジェクト研究員」として、新規事業の構想に向けた研究活動を開始した。

事業構想大では、企業や自治体と多くのプロジェクト研究を実施してきた実績がある。研修ともワークショップとも異なるプロジェクト研究の特徴は、研究員が様々な知見を獲得しながら、新規事業の構想に取り組む点。とちぎ創生プロジェクト研究でも、各研究員は、大学院の教員の授業、ゲスト講師とのセッション、フィールドリサーチなどを経て構想を練っていった。

11人の研究員の勤務先は、金融、損保、IT、自動車関連の企業から自治体職員まで多様で、これがお互いのプランの改善・向上に役立った。ある分野の知識を持つ研究員が、他の研究員の計画案に対しアドバイスをするという協力関係が生まれたのだ。

プロジェクト研究員は、社会人として通常業務をこなしつつ、研究会に参加し事業を構想した

1年間事務局を務めた下野新聞社の山﨑登美雄氏は、「バックグラウンドはそれぞれ異なりますが、前向きな姿勢で全体の士気を高める研究員や、全体をまとめる研究員など様々な個性があり、11人が切磋琢磨しあう雰囲気が醸成されていきました」と分析した。

そして2019年11月の最終プレゼンテーションでは、各研究員が大学教員や地元の経営者層を前に事業構想を発表した。事業構想の内容は、高齢化社会に対応するMaaSや、再生可能エネルギーに関するものなど。企業から派遣された研究員は、自社資源を活用し、将来の利益の柱となるような新規事業を考えた。全体的な傾向としては、地域課題をテクノロジーを活用して解決する、という構想が大半を占めた。

新井氏は、「研究員が構想のプロセスを楽しめるかどうかがポイントでした。自分の構想を、人に話したくなるくらい、あるいは熱中できるくらいに楽しいと感じること。そうした方向に研究員を導くことができていたならば、重要な目標の1つは達成されたと思います」と語った。

このようなプレゼンテーションについて、大学教員や勤務先以外の企業経営者の講評を受けられる機会は、社会に出てからはなかなかない貴重な機会だ。大学院による研究だから得られるチャンスともいえる。

最終プレゼンテーションから半年、コロナ禍もあり、研究員の構想が実現するかどうかは引き続きの努力にゆだねられている。事業構想大のこれまでのプロジェクト研究では、組織に戻った研究員が、研究の経験を生かして新規事業の企画を積極的に提案しているケースが多い。様々な形での結実が期待される。

プロジェクト研究員として事業を構想したTKC会計事務所事業部 SCG営業本部SCG研修課長の前田篤史氏は、「個人の事業構想においては、担当教授やゲスト講師からの様々なアドバイスにより、自分自身では気づかなかったモノの見方や、思考に気づかされ、視野の広がりを実感しました。1年を通じて、様々な経験を持った他社の参加者と交流できたことも、当プロジェクトの魅力だと感じています」と語っている。

第2期へ、準備を着々と進める

新型コロナウイルス感染症の影響を受けてはいるものの、「とちぎ創生プロジェクト研究」では第2弾の準備を進めている。

「NEZASホールディングスでは、グループ社員に『他流試合をしなさい』と話しています。新しい事業を考える際には、外からの刺激が必要です。社会人になると、社外の人と付き合う機会が限られてしまう。いつもの職場から外に出、地元・栃木で成長の機会が得られるチャンスを提供したい」と新井氏は語った。

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