2020年5月号

全国シティプロモーションサミット in Tokyo

「地域の理想の姿」を描き、ファンを増やすシティプロモーション

月刊事業構想 編集部

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「シティプロモーションの課題と展望」と題した本パネルディスカッションでは、全国自治体に実施したアンケート調査結果をもとに、自治体職員および民間企業、各1名のパネリストがシティプロモーション施策のヒントを語り合った。

亀岡 勇人(マッシュアップ 代表取締役)

共通課題は「4つの不足」

冒頭、モデレーターを務めた事業構想大学院大学 産官学連携本部長の織田竜輔は「シティプロモーションの年間予算は100~300万円が約半数を占めるボリュームゾーン。自治体の共通課題は、財源を筆頭に、スキル・人員・連携の不足にあることが明らかになりました」と報告したうえで「財源不足でも成果を上げるための視点」を尋ねた。

出典:月刊 事業構想 2018年5月号

 

マッシュアップ 代表取締役の亀岡勇人氏は「成果が出ないシティプロモーションの多くは戦略がないことが原因。地域の理想の姿から手段としてプロモーションを考えるのではなく、話題性やウケ狙いでSNSというメディアを選択し、単に情報を流すだけという自治体が少なくありません」と指摘し、地域経営の視点やマーケティングの観点からシティプロモーションの成果を定量化することが重要だと訴えた。さらに、亀岡氏は「多額の予算を使わなくても、理想の未来をデザインする場づくりは可能です」と話し、地域イノベーターと課題解決のアイデアを創出したり、地元の食材を使ったワークショップで特産品のテストマーケティングが実施できる定額制の地方創生イベントの事例を紹介した。

広報メディアはホームページやSNSと多様化しているが、それでも埼玉県三芳町 秘書広報室 佐久間智之氏(登壇当時)は「切り札になるのは広報誌」だと断言する。2011年にリニューアルした『広報みよし』は、雑誌と見紛うビジュアルと、住民目線の読み応えのある特集が評価され、4年後の2015年に全国広報コンクールで内閣総理大臣賞を受賞。以来、受賞常連となっている。

佐久間 智之(埼玉県三芳町 秘書広報室(現 PRDESIGN JAPAN 代表取締役))

「デザインや写真、編集を独学で習得し、印刷以外の作業を内製化したことで制作費は以前の半額になりました。全職員の間で佐久間メソッドを共有し、今では後輩だけで制作しています。雑誌のような広報誌は作れないというのは言い訳。広報誌を作る対価として給与を得る以上、編集者と同等のプロ意識を持つ必要があります」。

外部パートナーに依頼する際も丸投げはご法度。まちの魅力を一番知っている自治体職員が「プロ同士でタッグを組むつもり」で本気で取り組まなければ成功しない、と続けた。

スキルや人材が足りず、メソッドも共有できない場合はどうすればよいのか。亀岡氏は2002年にセールスプロモーション会社を起業後、企業のプロモーション企画を手がける傍ら、自治体向けの事業を展開するために、事業構想大学院大学で2年間の学びを得たことを紹介し、「リカレント教育を受けることがベストですが、難しい場合は公民共創のプロジェクト研究に参画する方法もあります」とコメントした。

理想の未来像から戦略を構築

SNSや動画を積極的に活用する自治体が増えている一方、調査結果から約半数の自治体で地域のビジョンが共有されていない現状が浮き彫りになった。これに対し、亀岡氏は「自治体の多くはSNSでの情報発信という手段の目的化に陥っています」と指摘し、「理想の未来の姿から逆算して戦略を構築するバックキャスティングの手法で、数ある要因から最良の要因を見つけ、それを磨いてストーリー化すること。そのストーリーこそが戦略になるのです」と述べた。戦略に基づいた情報をSNSに発信し、外国人旅行者の間で大ブームを起こした好事例として"空港ガチャ"を取り上げ、「成功要因はターゲットの絞り込みと、余った小銭で手軽なお土産が買えるというストーリーづくりにあります」と解説した。

次いで「若い世代に向けた情報はSNSだけの発信で十分なのか」という問いに対し、佐久間氏は「紙媒体に載せたQRコードから動画に飛ばす方法もあります。広報誌を入り口にクロスメディア化を図れば、幅広い世代に伝えることが可能です」と答えた。

地域のファンづくりが
関係人口につながる

シティプロモーションの目的は、認知率の向上、関係人口、ひいては定住人口の増加などが挙げられるが、「関係人口をシティプロモーションにどう活かすべきか」を尋ねた。

亀岡氏は「関係人口の創出は地域のファンづくりに言い換えることができます。見込み客から新規客、リピーターと段階を踏み、最後はファンを超えて、第三者に推奨してくれるアンバサダーに育てることがポイントです」と話し、秋田県五城目町の〈シェアビレッジ〉を紹介した。古民家を軸に"仮想の村"というコミュニティを形成し、年貢(年会費)を払って村民(会員)になることで、宿泊や寄合(飲み会)、一揆(祭り)への参加が可能になる。いきなり移住するのは難しいが、世代や職業を超えた人同士が「同郷」として交流できることから人気を集めている。

佐久間氏も「無理に定住・移住に繋げる必要はないのでは。こういったシンポジウムや講演などで、皆さんには佐久間というフィルターを通じて〈三芳町〉を知っていただきました。参加者の皆さんが、今後スーパーでさつまいもを購入しようと思ったとき、三芳町産とほかの地域のものが同額であったら、おそらく三芳町産を選んでくださると思います。これが農家の収益になり、結果として町の税収にもなります。小さな積み重ねも関係人口と言えるのではないでしょうか」と話した。

話題が「デジタルマーケティングをどう活かすか」に移ると、亀岡氏は注目の事例として長崎県大村市の〈大村湾データコンソーシアム〉に触れ、「民間企業の人流解析や購買分析データと、長崎県の観光型MaaSデータを連携させたデータプラットフォームを構築し、地域経済圏を確立しようという大々的な戦略が進んでいます」と紹介した。

次いで、佐久間氏は「『広報みよし』は多言語アプリで配信しており、世界のどこで読まれているかや、どのページのどのコンテンツが見られているかといったことを可視化・数値化できます。こういったデータを活用すれば、一番読まれている時間帯にSNSで情報を発信したり、KPI的に効果を測定してPDCAを回すといった手立ても講じられます」と話し、「広報が変われば住民が、まちが変わる。広報はラブレターです。まちが変われば日本が変わると信じています。まちの魅力を届けてまちに恋をしてもらい、FAN=FUNを増やして、住民自らがまちの魅力を発信してくれることこそがシティプロモーションです」と力強く締めくくった。

 

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