2020年1月号

サステナブル・シティの最先端

官民共創の好事例・横浜に学ぶ 富山市まちづくりの未来

月刊事業構想 編集部

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地域で新規事業を考えるためには、行政と民間の共創が不可欠な時代になろうとしている。7月から開始した富山市事業構想研究会の第4回では、官民共創のプロフェッショナルである横浜市を招き、富山市における官民共創事業創出のための議論が交わされた。

持続可能な開発目標(SDGs)の目標17に「パートナーシップで目標を達成しよう」とあるように、持続可能な社会に向けてオープンイノベーションが不可欠であることは世界的な認識となっている。10月下旬、中川悦宏氏(横浜市政策局共創推進室)、西田政司氏(富山市企画管理部部長)を招き、官民共創についての議論が交わされた。

西田 政司 富山市企画管理部部長

富山市は森市長が就任した2002年から人口減少に着目し、それまでの拡散型から集約型のまちづくりへ舵を切った。公共交通を軸とした拠点集中型のまちづくり「コンパクトシティ政策」を継続して推進している。同政策は、まちづくりだけでなく、福祉や環境などにも大きな効果をもたらし、地方都市が再生するための有効な方策のひとつとして国内外から高い評価を受けている。「今後、富山市がこれまで取り組んできた政策について、次のステージにどうつなげるか。さらには、『選ばれるまち』としてのプレゼンスを高めるにはどうしたらいいかを官民が共に考えていきたい」と西田部長は話す。

横浜市は民間との共創で
プレゼンスを高める

横浜市の4カ年計画(2018~21年)は、SDGsの視点を踏まえた取り組み、データ活用•オープンイノベーションの推進、地域コミュニティの視点に立った課題解決の3点が軸になっている。「共創でアップデートする」というビジョンを掲げ、セクターの違いを超えてイノベーションを起こしている。

横浜市共創推進室は、民間事業者から官民共創•連携に関しての相談や提案を受ける窓口だ。官民共創制度•手法を一括して所管する全国的にも珍しい部署で、民間や行政内部から相談•提案を受けて、マッチングやコーディネート、リサーチ、コンサルティングを行う官民共創のハブの役割を果たしている。既存の手法にとらわれず、民間と行政の対話を通じ、イノベーションを生み出し、新しい価値を共に創る(共創)を目指している。

中川 悦宏 横浜市政策局共創推進室

中川氏は「横浜市は、多様な民間の皆様との対話や連携を通じて共創しています。コミュニケーションを深め、アイデアやノウハウなど強みとなる部分を共有し、新たな価値を共に作るイノベーションを起こす。このことが民間のビジネスチャンスや市民サービスの向上、横浜の活性化やプレゼンスの高まりを生むことにつながっています。かかわる皆様とウィンウィンになれる連携を進めています」と強調する。

同室の設立当初は、同じ市役所内からの理解が得られにくいことも多かった。これを払拭するには、①小さなことでも取り組めることから実績を積み上げていくこと、②象徴的な事例を作ることを共創推進室では実践してきた。

共創を進める中で、横浜市が大事にしていることがある。まちづくりに対するビジョンが共有されていなければ、そこで選ばれた官民共創の手法が最適ではない場合もあるため、初めの段階で民間事業者と社会課題をどのように認識しているか意見交換し、それに対してどのような手法が最適な効果を生むかを一緒に考えることだ。「現在は幅広い課題がある中で、行政が推進したいことも多様化しています。地域のブランティングや、街の将来像をどう実現するかは、オープンな場で多くの人々と話し合い、上流からコミットして進めるというプロセスが大切だと思っています」と中川氏は語る。

リアルタイムデータの活用で
富山市の共創を加速

富山市では今年度、ICTを活用して都市機能やサービスを効率化・高度化するスマートシティの実現に向け、「富山市スマートシティ推進基盤」を構築した。富山市はこれまでも全国に先駆け、電力などの民間事業者を含めたライフライン等の情報を集積・活用するための富山市ライフライン共通プラットフォームの構築に2016年より取り組み、この11月から運用が開始され、企業や市民へ順次データを公開していく予定だ。

今回の基盤事業ではIoT技術によってリアルタイムに変動する様々な情報を市内全域に設置したセンサーネットワーク網からクラウド上へ集約し、複合的に分析・可視化することによって、幅広いサービスへの展開の実現を目指している。9月からは、36団体の民間事業者や大学などの研究機関に実証実験環境の提供を行なっているところだ。この事業では、全国で唯一、アクセスポイントが市内の居住エリアのほぼ全域をカバーする無線通信網が整備され、これまでのFace to Faceの市民サービスとIoT技術・その他各種ICTサービスを組み合わせ、コンパクトシティ政策の更なる深化を目指している。

これらの官民共創で集約したデータを分析・活用することで、市民に対する新たなサービスの提供、行政事務の効率化、IoT技術を活用した新産業の育成などデータを利活用するシステムが、富山市政に生かされる日も近い。

参加している研究員の富山構想進捗レポート

ガラスが創る新たな価値

「くすりの富山」とともに発展してきたガラス産業。従事者の自立促進、居住・就労の定着化、飲食など関連産業との相乗効果で、新たな付加価値を創造し、海外進出による知名度・ブランド力の向上を目指す。ワインなど洋酒では品種別にグラスを替えて楽しむ文化が存在し、食とのマリアージュ(調和)も定着している。富山発のガラスで日本酒の新しい文化を創り、ガラスを軸にしたマッチング事業により産業を振興する。

 

水がつなぐ未来の富山

富山市は立山連峰から富山湾までを一望できる地勢的特徴を持つ。神通川の治水による「水の流れ」の変化、そして市内南北を走るトラムが2020年3月に接続することで生まれる「人の流れ」の変化を契機に、ブールバールが中心の北部エリアを起点とした未来プロジェクトを構想した。水の生成から蒸発に到るサイクルを市内で体現し、水の豊かさのみならず、地域が育む特産物の成す「まちの豊かさ」を体感できるまちづくりを目指したい。

 

協創×健康 Office

コンパクトなまちだからこそ提供できる価値として「職住近接」と「コミュニティ形成」に着目し、クリエイティビティを採り入れた新しいライフスタイルの構築を提案した。美味しい食と大規模自然災害の少ない環境を有する富山市に独立系フリーランスを呼び込み、共同農業とデスクワークの兼業で緩やかな就農の提案や、スポーツを通じた健康増進プログラムを提案。フリーランサーの「聖地」となる持続的なまちづくりを目指す。

 

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