地域が主役の戦略的な観光地づくりを DMOが担うインバウンド戦略

観光産業の振興のカギを握るのは、海外からの観光客、特にリピーターだ。それを実現するにも、「地域には戦略的なマーケティングやプロモーションが足りない」と指摘する冨樫氏。地域が主役の「日本版DMO」で効果的にインバウンド需要を拡大する秘訣を語った。

冨樫 篤英(観光庁 観光地域振興部 観光地域振興課長)

消費額拡大のカギは長期滞在にあり

政府は観光振興を「地方創生の切り札」と位置づけ、観光立国の実現を目指してきた。観光振興の中でも最も有効だと考えられているのがインバウンドだ。訪日外国人旅行者数は直近6年間で3.7倍となり、右肩上がりに増え続けている。

増え続ける海外からの旅行者

資料:日本政府観光局(JNTO)資料に基づき観光庁作成
注)2017年以前の値は確定値。2018年、2019年1~3月の値は暫定値、同4~5月の値は推計 値、%は対前年同月比

資料:日本政府観光局(JNTO)資料に基づき観光庁作成
注1:(  )内は、訪日外国人旅行者数全体に対するシェア
注2:「その他」には、アジア、欧州等各地域の国であっても記載のない国・地域が含 まれる

 

インバウンド消費額も堅調に推移している。国内旅行者一人当たりの消費額は宿泊で5万4300円。これに対し、訪日外国人旅行者一人当たりの旅行支出は15万円3029円と、約3倍も多い。

これについて冨樫氏は「平均滞在日数が9泊と長期にわたることが影響している」と分析。その上で、「どれだけ訪れたかという"数"よりも、どれだけ長く滞在し、どれだけ多く消費していただいたかという"一人当たりの消費額"を伸ばすことがカギとなります」と量より質の重要性を説いた。

顧客視点の戦略でリピーターを獲得

訪日リピーター数も増加が続き、2018年に1900万人を突破した。背景には、旅行のスタイルが団体ツアーから個人旅行にシフトし、旅行先が東京や京都から地方へ、そして定番の観光地からより地域に根差した文化や生活を体感できる場所へと移り変わっている点にある。

「日本での体験に心から満足して初めてリピーターになるもの。各地域で海外からのお客様を確実にリピーターに変えていくことが大切です」。

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