下北沢の「個性ある花屋」が八戸へ移転 地方でもできると伝えたい

花屋、と呼んでいいのか戸惑う空間。その中に浮かび上がる植物が、ひとつの作品であるかのように佇む。店に立つのはmilcah店主・デザイナーの山田英輔氏。東京・下北沢から故郷の八戸市に店を移したUターン者だ。

山田 英輔 milcah店主・デザイナー

青森県主要3市のひとつ八戸市。中心市街の混雑から少し外れた場所にmilcahは建っている。喫茶店を改装した建物だが、庭の植物から外装まで、まるであつらえたような世界観だ。店名は掲げられているものの、花屋と知らせる看板はなく中の様子は見えない。

「下北沢の店はもっと尖っていました。内装が真っ黒で花の色だけが目立つようにしていました」と話すmilcah店主・デザイナーの山田英輔氏。

2012年に、ライバルのひしめく東京・下北沢で店を構え、研ぎ澄ましたデザイン力で目の肥えた東京の客を魅了してきた。気軽に入れる街の花屋とは180度異なる店構えには哲学がある。「下北沢で開業するとき、店全体を『milcah』というブランドとして見せることを目指しました。一人ひとり丁寧に、クオリティを保てる仕事にしたかったんです」。

仕事では没頭して作り込む職人気質。薄利多売をするつもりはなく、花屋をブランドとして見せる方法を考え続けた。「どういう人が出入りしたら自分が満足できるか、どこまで自分の個性を出せるか」、道行く人が自身の店のブーケを持って歩くのを想像し、花を束ねる輪ゴムの色にまでこだわった。高くした敷居に最初こそ入ってくる客は少なかったが、次第に美容師やデザイナー、編集者など、美的感覚に優れた顧客がつくようになる。

「商売は、ただお金が行き来するだけのものではないはず」と山田氏。細部にまで手を抜かない仕事が厳しい目を持つ彼らに認められ、八戸に店を移した今も注文は絶えない。

八戸市に移転したmilcahの新店舗兼アトリエ。喫茶店を改装した建物だ

東京から離れてやっていけるか?

下北沢に店を構えて6年。生産者と話をする中で、東京で売れても地方では需要がなく売れない花があると聞いた。出荷元の地方で買えればもっと新鮮なのに。そうした言葉を聞くうちに、故郷でも東京都と同じようにやれないだろうかと思うようになった。

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