デザイン経営、日本に定着 企業導入加速、大学の学科新設も増加

本連載の初回(2018年8月号)では「デザイン経営」をとりあげた。1年を経て、この用語を社会の側がどう受け入れてきたかを俯瞰的に眺めつつ、現代におけるビジネスとデザインの関係性を紐解いていきたい。

7月29日開催されたロフトワーク主催のフォーラム「デザイン経営2019」で自社のデザイン経営を紹介するジンズホールディングスの田中仁CEO

「デザイン経営」とは、経済産業省と特許庁によって設置された「産業競争力とデザインを考える研究会」が、2018年5月に公表した提言書で用いられた新しい用語・概念だ。

提言書は、デザインを「社会のニーズを利用者視点で見極め、新しい価値に結びつけ、事業にする営みであり、イノベーションを実現する力」と位置付け、こうしたデザインを活用した経営手法を「デザイン経営」と定義した。

その実施においては①経営チームにデザイン責任者がいること、②事業戦略構築の最上流からデザインが関与することを、必要条件として明示した(詳細は初回の本連載を参照)。

霞が関発の新用語でもあり、当初は表出しては消える「デザイン○○」の一つで終わるのではないかの声も聞こえていた。提言内容に関しても、ビジネスの世界では常套の範囲で特段の新規性を感じない、広がっても身内のデザイン周辺だけに留まるもの、といった意見もあった。

デザイン経営の急速な浸透

しかし今春頃から、大手メディアが「話題のキーワード」として取り上げるなど浸透が進み、今後も広範にわたりそうな状況になってきた。

その要因は明らかだ。①同研究会の有志委員による多発的な発言、②有力メディア連携、そして③スタートアップ系の急接近、の3つである。

ドラフト起草チームメンバーのA.T.カーニー梅澤高明氏、Takram田川欣哉氏、ロフトワーク林千晶氏などは、積極的にカンファレンスに登場し、背景や意義を繰り返し発言した。オピニオンリーダーたちの言動は、メディアや組織を動かし、デザイン経営は徐々に"市民権"を得ていった。

昨年秋頃からデザイン経営をタイトルにしたイベントが各地で催され、メディアで特集が組まれ、地域行政においても類する講座やセミナー、また助成事業などが始まった。【表参照】

表 メディアなどでの「デザイン経営」の広がり

出典:著者作成

 

提言を発した特許庁が、自らの組織をデザイン経営に改革したこともリアリティを高めることになった。

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