デザインと経営の新しい関係 15年ぶりデザイン政策提言の意味

今号から「経営×デザイン」を基軸に、昨今急速に広がりつつある「ビジネスデザイン」をテーマとする連載を開始する。初回は、経済産業省と特許庁が公表した報告書「『デザイン経営』宣言」の意味を、委員の論考を交えながら分析する。

いつからか。イノベーションという言葉が潮流跋扈し、それに反比例するように革新的なものが日本では生まれてこなくなったのは。

なぜなのか。デザイン思考が時代の寵児となったのは。その導入で事業のクリエイティビティは高まり、実際の経営に資しているのであろうか。

こうした状況だからこそ、今一度、本質的に経営とデザインの関係を考察するために本連載を始めたい。

キーワードは「ビジネスデザイン」。これは次世代のビジネスを深い視座で構想し、価値創出のための仕組みを立案し、美しさを感じさせるビジネスモデルをデザインすることとする。

初回は、産業と知財を司る行政府がタイミングよく新たに「デザイン経営」という政策提言を発表したので、これを解きほぐすことから始めたい。

15年ぶりのデザイン政策提言

経済産業省(商務・サービスグループ)と特許庁(審査第一部意匠課)は共同で、2017年7月にデザイナーや大手企業デザイン担当役員、経営コンサルタントなど11名が委員を務める「産業競争力とデザインを考える研究会」を立ち上げた。

経済産業省と特許庁がまとめた「デザイン経営」宣言。国のデザイン政策提言は15年ぶり

目的は、デザインによる日本企業の競争力強化に向けた課題整理とその対応策の検討で、①製品同質化が進む中での製品・サービスの差別化の在り方②デザインと産業競争力の関係 ③デザイン・アイデンティティの必要性④日本のデザイン力、デザインを取り巻く環境の国際比較 ⑤第四次産業革命とデザイン ⑥デザインによる日本企業の競争力強化に向けた課題 ⑦意匠制度が果たす役割と国際比較 ⑧課題解決のための対応策、以上8件を論点に掲げてスタートした。

そして5月23日に公表されたのが「『デザイン経営』宣言」だ。この報告書は、デザインを活用した経営手法「デザイン経営」の必要性や効果、並びに「デザイン経営」を推進するための政策提言について意欲的に取り組んだもので、多くのメディアで報道されるなど各方面で反響を呼んだ。

実は、デザインを主題とした経済産業省による大きな政策提言は、2003年の「戦略的デザイン活用研究会報告書『競争力強化に向けた40の提言』」以来、15年ぶりとなる。この間、産業構造もデザインの定義も含め、デザインとビジネスを巡る状況が、大きく変化してきたのは言わずもがなだ。

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