赤字の「道の駅」再生の仕掛人 人が行きたくなるシカケをつくる

赤字に陥っていた淡路島の道の駅、観光施設を変えた「道の駅再生人」。ユニークなメニューや商品開発、オペレーションの改善やブランディングなど、様々な施策により、人が「行きたくなる」仕掛けづくりを行う金山宏樹氏は、「大切なのは現場の意識改革」と説く。

「道の駅うずしお」には、大鳴門橋を間近に望むレストランがあり、淡路島の旬の食材が味わえる

赤字の道の駅、観光施設を再生
それは意識改革から始まった

兵庫県の淡路島にある「道の駅うずしお」は鳴門海峡のうず潮を間近で見られるロケーションが魅力。「あわじ島バーガー」や「白い海鮮丼」など地元食材を活かしたメニューが評判を呼び、ランチ営業のみにも関わらず、レストランの年間売上は2億4000万円(2016年)にのぼる。わずか50坪の物販スペースでも「玉ねぎドレッシング」などの土産物の売れ行きが好調だ。

しかしかつては、経営母体である「うずのくに南あわじ」は多額の負債を抱えるなど、経営状況は芳しくなかった。それが今では、年商14億円を超えるまでに復活を遂げている。

この再生劇に一役買ったのが、2012年5月に入社した金山宏樹氏だ。金山氏は前職のUSEN(東京・品川)でグルメサイトの営業を経験し、そこで得た繁盛店づくりのノウハウを道の駅で活かした。顧客志向のメニュー開発やサービス提供に取り組んだが、何より優先したのは人の意識改革だ。

金山 宏樹(シカケ 代表取締役)

金山氏が入社した当時、道の駅うずしおに来るのはツアーの団体客が中心。従業員の意識は一般客に向いておらず、凝った料理を出しても仕方がないという思い込みが蔓延し、仕事がしんどい、給料が安い、上司が悪いといった愚痴や周囲のせいにする傾向も見られた。

金山氏が最初に取り組んだのは、目標数字を掲げたり、横文字のビジネス用語を使って指導をしたりすることではなかった。従業員に対して、家族や親しい友人が訪れた時をイメージしてもらい、「自分たちも楽しく働き、お客様にも楽しんでもらうことを目指そう」と呼びかけたのである。そして少しずつ、機械的に発せられていた「いらっしゃいませ」が、心のこもった「こんにちは」になり、お客からも言葉が返ってくるようになったという。

その後も、メニュー写真をプロが撮影したらどう見えるか、POPにテレビで人気の言い回しを採り入れたらお客の反応はどう変わるかなど、具体的に顧客志向を実践していった。その結果、レストランの客単価や土産物の買い上げ点数はじわりと上がり、従業員たちのモチベーションも上がるという好サイクルが回り始めた。今では、一般客の来訪が増えたことで団体客の受入れはほぼ平日のみとなり、日々の業務量も安定するようになった。

大ヒットメニューを次々開発

そして入社から1年が過ぎた頃、金山氏は看板メニューの開発に乗り出した。春の生しらす、夏のサワラやハモ、秋の裏旬サワラ、冬の「淡路島3年トラフグ」といった淡路の四季の味を一通り確認してからのメニュー開発だった。

折しも鳴門海峡を訪れた地方紙記者から「何か話題はないか?」と問われた際、うず潮に見立てた玉ねぎをトッピングした「うず潮世界遺産カレー」を紹介すると、写真付きで大きく掲載された。この成功をきっかけに、「メディアの取り上げやすさ」を意識。旬や物語性(歴史・文化)、社会的背景や時流を考えながら、年間計画で新メニューを開発し、ブログやプレスリリースで情報発信を行うようになった。

玉ねぎの輪切りをうず潮に見立てた「うず潮世界遺産カレー」

いまや淡路島の顔とも称される「白い海鮮丼」は、「地元では白身魚しか獲れないから、華のある彩りの丼ものはできない」という料理長の嘆きを逆手にとった。丼にのせる前の白い魚を名札付きで並べてその魚を知ってもらい、お客自身に盛り付けてもらうという物語性の高いメニューにした。

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