2019年7月号
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地域特集 和歌山県

住民が作る農業ツーリズム 地域課題から生まれた交流施設

玉井 常貴(秋津野 代表取締役社長)

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南紀田辺ICからほど近く、緑に囲まれたグリーンツーリズム施設「秋津野ガルテン」。開業は11年前の2008年だが、そのストーリーの始まりは平成の初頭にさかのぼる。「秋津野ガルテン」は、地域を思う住民が取り組みを積み重ねた成果だ。

2006年まで校舎として利用されていた旧上秋津小学校の木造建築を核に、レストラン、宿泊棟、ICT棟(右)などを追加した。年間7万人が利用する人気の観光地に成長

古くから人が集まる地域

「秋津野ガルテン」は都市と農村の出会い・交流を目指す拠点であり、さまざまな体験が楽しめる人気のスポットだ。ガルテンはドイツ語で庭を意味する。その名の通り、施設内は緑豊かで中庭があり、散策も楽しめる空間になっている。かつて小学校だった木造の建物が交流スペースとなり、新築された宿泊棟やレストランも敷地内に並ぶ。日本全国だけでなく海外からも多くの観光客が訪れており、宿泊施設に空きがない状態を解消するため2019年3月に宿泊棟が新設された。

この施設がある田辺市の上秋津地区は、平安時代にはすでに集落があったとされる歴史ある地域だ。昔から今と同じように人が住み、かんきつ栽培が地域を支えていた。同地区に転機が訪れたのは、平成の初頭。自然環境はもちろん、交通アクセスも良いことから急激な人口流入が起こり、畑の周りに家が立ち並ぶように。農村地帯でありながら宅地化が進んだことにより、住民間でのトラブルも起こり始め、地域がバラバラになりつつあった。

成功への道筋と工夫

ここで、「自分たちで地域の問題解決に向けて何かをしなければ」との思いが、新・旧の地域住民で構成されるいくつかの組織を誕生させる。その代表的な組織であり、秋津野ガルテン誕生の礎となったのが1994年結成の「地域づくり塾・秋津野塾」だ。それまでバラバラに活動していた町内会や婦人会、子供クラブ、農業委員会など、地域内の全ての組織をひとつにまとめ、運営の中心となる事務局を公民館に置いた。その理念は「都会にはない、香り高い農村文化社会を実現し、活力と潤いのある郷土を作ろう」。塾は、地域の教育や福祉、防災などの問題解決を行ったり、地区全住民の幅広い合意形成をはかったりする場として活用された。そして結成翌々年の1996年、その活動が評価されて第35回農林水産祭表彰・村づくり部門で、天皇杯を受賞。この経験は今も地域住民の誇りとなっているという。

玉井常貴 秋津野 代表取締役社長

塾の運営の中心である公民館の館長となり、現在は秋津野ガルテン運営会社の農業法人株式会社秋津野・代表取締役社長の玉井常貴氏は、働き盛りの40代半ばで脱サラして地域づくりに参画した。ソーシャルビジネスをスタートさせ、地域資源の利活用を進めてきた立役者のひとりだ。

「人材資源は、1+1=2ではないですよね。3にも4にもなります。人が集まって連携すれば、より活発な地域づくりができます」と話す玉井氏。全株主の半分以上、そして取締役員の3分の2以上が農業者である企業・秋津野を立ち上げ、グリーンツーリズム事業を起動に乗せた経緯を、「きちんと地域住民に理解してもらうことが大切。秋津野では2000年から2年かけて将来を見据えてつくった基本計画・マスタープランを策定しましたが、それを知って理解してもらうため、ストーリー仕立てにして『秋津野塾未来への挑戦』という本にまとめて全世帯に配布しました」と説明した。

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