1年生に「起業必修」 豊田章男氏を輩出、バブソン大学の起業教育

豊田章男氏などを輩出する起業教育の名門、バブソン大学。大学1年生には起業を必修化し、失敗するほど成績が上がるなど、ユニークな手法で学生の起業家的マインドを育んでいる。同校で起業学や失敗学を教える山川恭弘氏に、起業教育のポイントや日本企業の課題を聞いた。

山川 恭弘(バブソン大学アントレプレナーシップ准教授)

バブソン流、起業の三大原則

今年創立100周年を迎えるバブソン大学(アメリカ・マサチューセッツ州)は、アントレプレナーシップ教育(起業教育)の名門として知られ、U.S.News & World Reportの世界ランキングでは、アントレプレナーシップ部門で26年間連続トップを獲得している。トヨタ自動車の豊田章男社長やイオンの岡田元也社長も修了生だ。

多数の起業家、経営者を輩出するバブソン大学だが、同校で学部生・MBA・エグゼクティブ向けに起業学を教える山川恭弘准教授は「バブソン大学では起業家を輩出することが唯一の目的ではありませんし、起業を目指していない学生もいます」と述べる。「起業教育とは、起業家的な考え方や行動法則を身につけること。優れた人材を育てるための方法論として起業教育を採用しているのです」

山川氏によれば、バブソン大学には「起業の三大原則」が存在するという。まず「行動こそすべて」、何事もやってみなければわからないという精神。次に「失敗は当たり前」と考え、失敗に対する寛容度を持つこと。そして「周囲の人を巻き込む」こと、すなわち潮流をつくること。この三大原則を、学生たちは講義や実習を通して身につけていく。

「とにかく行動、失敗は必然、人を巻き込めという考え方は、起業以外にも一般化できることですよね。仕事や趣味、部活動などさまざまな物事が、起業家的な考え方や行動法則を身につけるだけで大きく変わるんです」と山川氏は語る。

日本の起業教育は、ビジネスモデルを学び、事業計画書の作成能力を身につけるというものが一般的だが、山川氏は「この手法はもはや時代遅れ」と指摘する。

「例えばバブソンでは事業計画書という言葉は使いません。計画は書いた時点で"古く"なってしまいますから。とにかくAct、Learn、Build、Repeatのサイクルを継続させ、起業家的な考え方や行動法則を体に浸透させていくのです」

バブソン大学は起業教育の名門であり、世界中から学生が集まる。教員はほぼ全員が現役の実務家だ

大学1年生は起業が「必修」
成功ではなく失敗を評価する

実際にバブソン大学ではどのような講義が行われているのだろうか。

バブソン大学の看板授業であり、山川氏が担当する「Foundations of Management and Entrepreneurship(FME)」は、約500人の大学1年生全員に起業を経験させる。学生をチームに分け、前期で会社を立ち上げ、後期で運営をする。チームメンバーから社長以下役職を選び、会社設立のうえ銀行口座も作る。毎年40-50の会社が立ち上がり、1社あたり30-40万円の運営資金を大学から提供する。学期末には必ず会社をクロージングさせ、学生はエントリーからエグジットまでのビジネスサイクル全てを経験することができる。

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