「学校を建てたのは牛」タンザニアの自給自足農家が始めた草の根運動

女性が訓練と信頼、そして成功に必要なツールを与えられれば、コミュニティ全体が繁栄する。この物語は、地元に根差したものであると同時に、普遍的なことでもある。

(※本記事は『GlobalVoice』に2025年5月31日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

頭にバナナの房を載せた笑顔の黒人女性
ムララ村の自宅で訪問者を迎えるママ・アンナ。頭にはバナナの房を載せている。Photo by Sydney Leigh Smith. Used with permission.

タンザニアのアルメル県メルー山の中腹あたりの高地に位置する静かな村、ムララ(Mulala)。人口わずか2,000人のこの村は、地図の上では見逃されがちだが、ここで1人の女性、ママ・アンナとして知られる人物が、地域開発のあり方を根底から変えた。

自給自足の豆農家から、地域の教育者であり起業家へと変貌を遂げた彼女の物語は、思いがけない贈り物、1頭の牛から始まった。

「涙は水のムダ」始まりは開発支援員が支給した1頭の牛

ママ・アンナ(本名:アンナ・パランギョ)氏は、メルー族出身で6児の母だ。FAIDA小規模企業振興ネットワークに所属する717人の女性の1人でもある。彼女の学歴は初等教育まで、資源も限られていたが、家族を養うために当初は豆の栽培を始めた。しかし収入はわずかで、貯金できる分は貯めつつ、なんとか別の方法を模索していた。

そんな中、開発支援員が彼女に1頭の牛を支給した。しかし彼女はどうすればいいのか分からず、「このゴンベ(牛)で、何ができるんですか?」と声に出して聞いた。やがて搾乳の方法を学んだ。

毎日、彼女は家族や友人に牛乳をふるまった。やがて牛乳が余るようになったとき、こう決意した。「このマジワ(牛乳)を売ろう」と。毎朝、長い坂道を下って町まで行き、午後には坂を登って帰ってきた。「サルみたいに」カチャカチャと、コインの音をポケットに響かせながら。

続きは無料会員登録後、ログインしてご覧いただけます。

  • 記事本文残り74%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。