Jリーグ サッカーの枠を超え、企業・地方のアジア進出を推進

ある日の茨城新聞の一面を飾った、"J2水戸、ベトナムとの架け橋に"という記事。企業の海外進出から地方の観光ビジネスまで、スポーツの枠組みを超える" アジア戦略"には各界も注目。地域密着型のサッカーチームだからできることとは...。8年にわたりアジア戦略を進めてきた構想を聞く。

事の始まりは8年前のカンボジア

「8年前の1月29日、アジアカップ優勝を決める日本チームのゴールが突き刺さった瞬間、私の中でJリーグのアジア戦略が胎動を始めました」。現在、Jリーグ国際部長としてグローバル戦略を進める山下氏は振り返る。

山下 修作(公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ))

山下氏がJリーグと関わりを持つようになったのは2005年。先輩が立ち上げたスポーツマーケティングの会社で、Jリーグの仕事を業務委託的に請け負うようになったのが最初だ。当時、ファンサイトや公式サイトの運営・プロモーション業務を手がけていた山下氏。2009年頃「このまま、人口減少・高齢化の進む日本だけをマーケットにしていては、Jリーグは危ない。勢いのある東南アジアで何か取り組めることはないかと思いはじめました」と語る。

当時、タイにプロサッカーチームが立ち上がったとニュースになっていた。山下氏は新規事業として"東南アジアのサッカーチームやリーグへのコンサルティング"を提案したが、突拍子もない提案に当然理解を得られなかった。タイのプロリーグを調査するため、カンボジアの子どもたちにJリーグサポーターから寄付をしてもらったユニフォームを届けるプロジェクトを企画。その帰りにタイに寄り、試合視察をしたり、チームを回って報告書をまとめた。

2011年にカンボジアから始まったユニフォーム寄付企画は、毎年継続しており世界各国の子どもたちに届けている(上:スリランカ 下:東ティモール)

その熱意が認められ、最初の提案から1年半、2011年4月に新規事業開発プロジェクトとして立ち上がったのが、Jリーグのアジア戦略の始まりだ。

山下氏は、単身カンボジアを訪問し、サポーターから集めた善意のユニフォーム451枚を、電気もガスも水も整備されていない地域の子どもたちに届けた。「その時の子どもたちの笑顔と、カラフルなユニフォームを着て校庭で遊ぶ姿が忘れられない...」という。「Jリーグには、競技だけではない価値があると感じた瞬間でした」。

"東南アジアでJリーグにできることが必ずある"。カンボジアからの帰り、1月29日にタイのスポーツバーでアジアカップ決勝を観戦しながら、山下氏の心に、アジア戦略へ強い想いが芽生えた。

逆転の発想で弱みを強みに

「重要なのは価値の再発見です」と山下氏。アジア戦略を構想した当時、Jリーグの事業規模は約120億円。アジアではダントツだったがイングランドと比べれば20倍ほどの差があった。

「イングランドの収入源の多くは海外放映権料で、その7割がアジアから流れていました。タイ人が年間100億円払って、イングランドのプレミアムリーグを見ている。アジアでこれだけのお金がサッカーに使われているのに、アジアに還元されていない。このお金がJリーグに入ってくる仕組みができないかと考えました」(山下氏)。

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