「まっすぐに」穴を開ける、独自の加工技術で全国から依頼殺到

様々な素材・形状の部品に、穴を明けることに特化した加工企業ハイタック。静岡県で生まれ、全国の顧客の要望に応えている。不可能を可能にする深孔加工で、新しい医療機器を生み出すことを目指す。

沼津市の深孔加工受託メーカー、ハイタック。金属や樹脂などを切削し、細く深い穴を加工している

ハイタックは、沼津市に本社・工場を持つ、穴明け加工の受託企業だ。独自開発した、細く深い穴を明ける専門加工機械「ガンドリルマシン」で、樹脂や金属など様々な素材・形状の部品に、正確に穴を明ける。直径1㎜、深さ40cmの穴を、まっすぐに明ける技術を持つ企業は世界でも珍しく、年商は5億円を超えている。

棒に穴を明けパイプにする装置

同社は2008年に、現会長の稲田博氏が設立した。稲田氏は、陸上自衛隊の通信学校を経て、電気製品の修理サービス担当や工作機械メーカーの電気系エンジニアとしてキャリアを積んだ。1990年代に独立し、フリーランスの電気設計・配線・メンテナンスのエンジニアとして、様々な製造現場で働いてきた。その過程で知り合ったのが、ガンドリルマシンを開発していた会社。そのオーナーからの声掛けで、開発を引き継ぐとともに投資を得、設立したのがハイタックだ。

稲田博 ハイタック 会長

ガンドリルマシンは、もとは銃身の穴を明ける加工のために開発された機械だ。ドリルに取り付ける「刃」を変えることで、様々な大きさの穴を明ける。3cmくらいまでの小径の穴明けに用いられ、細い穴に削りかすが詰まらないよう、油を流しながら切削していく。穴が小さく、深くなるほど、また削る対象が小さく、細く、硬いほど、高い加工精度と技術が求められる。

ハイタックが創業時に目指していたのは、ガンドリルマシンそのものの販売だった。自動車のエンジン部品などのメーカーには、深孔加工を精度よくできる機械への需要がある。同社では加工精度向上のため、穴明けの速度と位置を決めるカギになるサーボモーターから内製し、7種類のモーターを自作した。さらに、ドリルに動力を伝える仕組み自体も変えた。稲田氏が蓄積した電気制御の知識や、人脈を駆使して開発したガンドリルマシンは、好評を持って各社に納入されていった。

同時に、社内にある装置を利用して、ガンドリルマシンを用いた受託加工も行っていた。すると、マシンを購入した企業からも受託加工への要望が出、ほとんどがリピーターになった。人員が限られる中、案件数の増加に伴い、マシンの生産と受託加工の両立が困難になる。また、産業用機械のメーカーについて回るのが、メンテナンスの問題だ。アフターフォローの難しさから、海外の顧客には販売していなかったが、国内企業でも海外の工場に機械を移動するケースはある。出荷台数が増えるほど、メンテナンス需要も増えるため、先々を考える必要があった。

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