昆虫と共生する茶畑 有機栽培20年の農園、若者・海外にも発信

今日、食のグローバル化が加速度的に進んでいる。日本の暮らしに深く浸透している「お茶」も例外ではない。日本最大級のお茶の生産地・南九州市知覧町の知覧農園は、化学肥料や農薬に頼らない有機栽培を、大きなうねりに左右されることなく20年間続けている。

茶畑の中の塗木製茶工場

有機栽培20年
土作りが昆虫との共存を可能に

古来より、薬・解毒剤として重宝され、時代によっては高級品として嗜好されてきたお茶。農業生産物の流通形態がめまぐるしく変わる現代では、荒茶からパッケージされた製造品やペットボトルまで形態は様々である。日本の暮らしに欠かせないものとなっているお茶だが、その生産量は、鹿児島県が2万6600トンと全国で2位(2017年度)。市町村別で見ると南九州市が1万1000トンで、日本一のお茶の生産地となっている。

中でも知覧で生産されたお茶は、全国茶品評会で農林水産大臣賞を連続受賞するなど全国的に知られており、2017年4月には「知覧茶」のブランドに統一された。まさにお茶の産地として名実ともに日本一といえる知覧町で、20年にわたりお茶の有機栽培に取り組んでいるのが知覧農園だ。

塗木あすか 知覧農園 代表取締役

「知覧農園で販売するお茶は、17軒の有機栽培農家が生産し、有機農産物加工食品の認定を受けた塗木製茶工場が製造を行っています。延べ40ヘクタールの畑で、化学肥料や農薬に頼らず、太陽・水・土地など自然の恵みや生物の食物連鎖を生かしたお茶作りをしています」。知覧農園代表の塗木あすか氏は5人兄妹の末っ子。2017年12月、父の故・塗木実雄氏の強い思いとともに代表を引き継いだ。

「有機栽培で一番重要なのは土作りです。農園で使う土、EMぼかしは自社生産しています」。病気にならない強い土を作るため、もみ殻・米ぬか・油かす・魚かす・鰹の煮汁等、地元の副産物をEM菌と一緒に、水分調整しながら配合。そして半年から一年かけて発酵させたものを、茶畑に散布している。そうすることで土の中にバクテリアが育ち、ミミズやアリ、コガネムシなどが土の中で生存するようになり、茶園の周りには雑草(草花)が生え、その中でテントウムシやカマキリなどの昆虫達が茶にとっての害虫を餌に生存する環境が生まれる。

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