ローカル線の突き抜ける力 琴電社長がベンチャーに投資する理由

一度経営破綻に追い込まれながら、全国の地方鉄道の中でも、トップクラスの利益を誇る会社に復活した高松琴平電気鉄道(琴電)。同社の真鍋社長は、積極的なベンチャー支援も展開する。琴電の躍進を支えている戦略と信念について、MATCHA・青木社長が話を聞いた。

真鍋 康正(高松琴平電気鉄道 代表取締役)

青木:高松琴平電気鉄道(琴電)は2001年に経営破綻しましたが、現在では全国のローカル鉄道の中でもトップクラスの利益をあげています。琴電を再生させる過程で、特に重視したことはありますか。

真鍋:経営破綻した当時は大赤字で、いわばマイナスからのスタート。社内のガバナンスも効いていませんでした。

そこから企業文化を変えるために、一番大事にしたのはお客様とのコミュニケーションです。全駅にご意見箱を置き、メールや最近ではSNSでのご意見も含めて、すべてのご意見を全社で共有しました。さらに、ご意見と回答は全部、ウェブサイトで公開するようにしました。

鉄道ファンからのマニアックな質問にも答えているので、月刊誌のように楽しみにする人もいて、公開が遅れると「まだですか?」と問い合わせがきたり(笑)。お客様とのコミュニケーション自体が1つのメディア・コンテンツのようになり、社員の意識も変わっていきました。

大事なのは「狂っている感」

青木:琴電は数々のユニークな施策でも知られています。仏生山温泉とコラボした、乗務員や職員が制服のまま温泉に浸かるポスターは話題になりました。他にも、駅構内に巨大なスズメ・バルーン「メガチュン」を呼んだり、一般の方に線路や踏切を販売したりと、一風変わった取り組みをしています。

琴電は、ユニークなポスターでも話題を集めた

駅構内に出現した巨大なスズメ「メガチュン」

真鍋:一度破綻した会社は、悪いイメージが付きます。社員がプライドを持って働けるように、企業イメージを変えていくことは大きなテーマでした。また、鉄道はお堅い業界なので、笑いやユーモア、ゆるさみたいなものを打ち出せれば、際立った存在になれます。

私は、社内外からアイデアを集めて、できるだけ受け入れていきました。やっているうちに社員が、こういう変なことやったら社長もOKだし、お客様も喜んでくれるとわかってきて、みんな変なことを言うようになってきた(笑)。「メガチュン」も線路の販売も、全部社員のアイデアです。

青木:先日、ある経営者の方とブランド論を交わした時に「狂ったエピソードの積み重ねがブランドをつくる」という話が出ました。琴電についても、良い意味での狂っている感、「そこまでやるのか」といった期待値を超える取り組みが、企業のブランドになっていると感じます。

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