かつての産業強者・山口県 今突破すべき「3つの壁」とは?

日本屈指の工業県として、日本の経済発展の礎となってきた山口県。しかし、グローバルな産業構造が変化する中で、その強みが必ずしも通用しなくなっている。今後の発展を目指すために、山口県は「3つの壁」を乗り越えなければならない。

山口県は基礎素材型産業が集積し、多数のコンビナートが立地している Photo by kanegen

東京から寝台特急で九州に向かうと、ちょうど目覚めた頃、列車は山口県内を走行していた。左手には朝日に輝く石油化学コンビナート。私は、吹きあがる炎を見て、日本の産業発展を実感し、子ども心にも激しい胸のときめきを覚えたものだ。時あたかも高度経済成長期真っ只中の1960年代のことである。

当時はもとより、現在に至るまで、山口県は日本屈指の工業県として、日本の経済発展の礎となってきた。2016年の工業生産額全国4位、1事業所当たり製品出荷額17年連続全国1位、工業用水給水能力・契約水量全国1位をはじめ、多くの指標がそれを証明している。

しかし、いつしか時代は移り、同県の強みが必ずしも通用しなくなり、それどころか、弱みに転化するなど、徐々に綻びが目立つようになってきている。

高度専門人材確保の壁

山口県の製造業は、「地域資源を活用した輸出中心の基礎素材型産業に特化」した点に特徴があった。しかし、グローバル経済における産業構造転換などの環境変化が進む中、同県の製造業は、基礎素材型産業とのシナジーが効く「関連型」産業への軸足シフトを開始する。医療関連産業や水素等環境関連産業である。これら業界の市場規模が今後世界的に拡大するならば、同県にとっては大きな「機会」となり得るだろう。

しかし、同時に、その足枷となるような「弱み」「脅威」も存在している。最大の要因は、山口県そして日本全国において進行する「人口減少」と、県内に残存する「封建的価値観」である。

これまで県内の高校では、工業を学ぶ生徒の比率が全国2位など、製造業に入職する高卒者の質と量は屈指のレベルであった。彼らの多くは、東京などに本社を置くグローバル製造企業の県内事業所(主として工場)に、現地採用で正社員として入社し、基幹労働力になっていった。

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