2018年4月号

環境会議

再生可能エネルギーの今 アメリカに焦点を当てて

山家 公雄(京都大学 大学院 経済学研究科 特任教授)

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世界で再エネは急激に普及

再生可能エネルギー(以下再エネ)は急激に増えている。世界の電源開発量に占める再エネ比率を見ると、2016年度は8割を記録し、前年度の5割からさらに上昇した。国際エネルギー機関(IEA)の2040年時点の発電電力量の予想を見てみると、現在予定している政策遂行を前提とした「新政策シナリオ」では4割、CO2削減対策をしっかりと取る「450(2℃)シナリオ」では6割超を占めるとしている(図1)。

 

 

図1 電源開発を圧倒的にリードする再エネ
出典:資源エネルギー庁、「再エネ大量導入委員会」資料(2017年5月25日)に加筆

再エネ普及で世界をリードする欧州連合(EU)を見ると、2016年度の電源開発の9割は再エネが占め、発電電力量に占めるシェアは3割を超えている。ドイツでは2017年のシェアは36%となり、同国の2020年目標である35%を4年前倒し達成した。また、EUは、パリ協定目標年次である2030年時点の目標を、全エネルギーに占める再エネの割合を27%としている。電力に焦点を絞ると50%となる。

中国、インドが再エネ開発をリード

先進国だけではない。コストが高い再エネは財政的に余裕のある先進諸国で先行的に普及し、経済成長段階にあるが資金力に乏しい新興国では安価で豊富な石炭等化石燃料に頼らざるを得ない、との認識が一般的だった。しかし、予想を遥かに超える風力・太陽光のコスト低下で、新興国でも再エネ開発ラッシュが起きている。中国は、既に石炭のピークアウト現象が起きており、世界最大のしかも圧倒的な再エネ推進国としてその地位を固めている。煤塵等の公害問題対策だけでなく、将来性の高い産業として、工場で作るエネルギーとして世界進出を視野に入れている。インドでも再エネへの期待が高い。発電設備では、再エネは2016年末で31%を占めているが、今後も風力、太陽光が著増する計画であり、2022年には5割超となる見通しである。

このように世界で再エネが普及してきている。それは、再エネのもたらす便益が大きいからである。まず、国産資源であり自給率向上に資する。輸入燃料を節減でき国富を増やすことができる。次にCO2を排出せず環境面で優れている。そしてコストが安くなった。また、分散型であり災害に強い。

急激に低下したコスト

最大の課題であったコストであるが、急速に下がってきた。世界のいたるところで発電コストが火力並みかそれ以下になっている。風力・太陽光発電の入札に対する落札価格、発電者と小売り等購入者との間の長期売買契約を見ると、kWh当たりで数セント水準の案件が世界中で登場してきている。中東では太陽光で2セント台、メキシコで1セント台も登場した。最新のトピックは、米コロラド州で地元の電力会社が募集した開発事業で、蓄電池併設の風力発電が中間値でkWh当たり2・1セントを、太陽光が3・6セントを記録したことである。再エネを主とする分散型時代は現実になってきている。

資源大国アメリカでまだ低い再エネ比率

他方、アメリカ合衆国(以下、米国)全体の再エネ発電比率は必ずしも高くない。2015年は13・6%であり日本とほぼ同一である。欧州の約3割に比べて大きく見劣りする。その要因として、歴史的に資源大国として世界をリードしてきた経緯がある。20世紀はアメリカの世紀であったが、その多くは豊富なエネルギーに負っていたといってもいい。1859年にペンシルベニアで石油が採掘、1930年代にテキサスに大油田が発見され、第2次世界大戦直前の石油産出量の2/3は米国だった。この間、石油を燃料とする自動車産業、電力事業という20世紀の主役産業が活躍する。石炭も無尽蔵にあり、大陸横断鉄道、ミシシッピーを運行する蒸気船の燃料となる。原子力技術開発で世界をリードし、戦後は平和利用を呼び掛けて自らは世界最大の原発保有国となる。オイルダラーに象徴されるように石油、原子力を主にエネルギーの決済通貨としてドルが用いられ、ドルの繁栄を支えることになる。

再エネ推進政策は米国州政府が主導

こうした中、米国は自由経済の伝統があり、競争力のあるエネルギーが使用されてきた。米国にはエネルギー政策は存在しないといわれる。連邦政府は、州を跨ぐ対策、競争整備や環境対策を主導する。エネルギーでは卸取引や送電線、基幹パイプライン等の整備・運用の分野である。こうした中で、新しい技術である再エネは、必ずしも国策として優遇されたけでも、EUのように普及目標値があるわけでもない。連邦政府の最大の支援策は減税措置であり、風力は発電量kWhごとに2・2セントの生産減税、太陽光は3割の投資減税が存在する。

一方で、小売り、配電線等のローカルインフラは、消費者保護とともに州政府の役割である。エネルギー政策は州政府が担うと言われる所以である。州政府の最大の再エネ支援策は、小売りに占める再エネ由来電力の割合を規制するRPS(Renewables Portfolio Standard)であり、現在29の州で実施されている。ハワイ州は2045年までに100%、カリフォルニア州とニューヨーク州は2030年までに50%としており、特に高い。また、需要家の太陽光発電余剰分を小売り料金で小売会社に販売でき、料金を差額決済できるネットメータリング制度がある。

こうして、環境意識の高い州を主に普及してきた中で、欧州・中国発の再エネの爆発的な普及による大幅コストダウンの恩恵が米国にも波及し、自由競争で勝てるようになったきた、と言う局面にある。今後の普及は約束されたと言っていい。

飛躍的な普及段階に入る

図2 米国電源別発電電力量の推移と見通し出典:EIA, Energy Outlook 2017

さて、前置きが長くなったが、最近の米国における再エネ普及は目覚ましいものがある。図2は、米連邦エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が公表した電源別電力供給量の推移と見通しである。再エネが急拡大しているのが分かる。2018年には原子力を抜き、2028年には石炭を抜く見通しである。また、天然ガスが急拡大している一方で、原子力が頭打ち、やや減少傾向、そして石炭が急減していることが分かる。シェールガス革命で天然ガス価格が急落後低位安定している中で、石炭と原子力が競争力を失ってきた。天然ガス価格が下げ止まり今後上昇が見込まれる中で、再エネが最も安い地域が増えてきている。やや遅れてきた感のある米国であるが、再エネは今後急増していくだろう。EIAは、再エネに関しては保守的な予想をしてきている。

やはりEIAが発表した電源の新設・廃棄の推移を見ると、新設のほとんどが風力、今後は太陽光であり、石炭の廃棄が目立ち、今後はガス火力も廃棄が増えていく見通しとなっている。

再エネコストは米国でも下がってきており、図3は、著名なシンクタンクLazardが昨年12月に発表した電源毎の長期平均費用(LCOE)の推移である。主要事業の情報を収集してその中間値を取っているが、風力、太陽光が急低下し、2015年以降は最安値となっていることが分かる。

図3 電源別長期平均費用の推移
出典:Lazard

分散型システム時代を切り開く米国

米国で注目すべき動きに、屋根置き太陽光発電(ルーフトップソーラー)の普及が著しい地域があり、ネットゼロの省エネ建物(ZEH、ZEB)政策とも相まって自家消費が増え、系統を通じて購入する電力が急減する現象がある。供給側が販売量の減少をカバーするために料金を上げるとさらに自家消費が増えるという(供給側から見た)悪循環が生じる。これはデススパイラルと称される。競争下にある発電事業はともかく、インフラである配電事業の維持に黄信号がともってきているのだ。

屋根置き太陽光の普及は、州内設備を前提にRPS目標を立てている場合があること(カリフォルニア州、ニューヨーク州等)、消費者への政治的アピールから補助金支給等の助成を実施する州や市が少なくないこと等の要因による。こうした州を主に、分散型時代のシステム構築を真剣に構築しようとしている。その解は、自由競争を進めるべく連邦政府が卸取引や広域系統運用で培ってきたシステムを、需要家やローカル系統に拡張することにある。先行して整備したシステムを世界に販売しようと考えている。

トランプ政権では原子力、石炭といった従来型産業が復活するとの見方もあったが、地方政府やグローバル企業を主に再エネ導入の動きは加速している。環境貢献で国内外世論を説得でき、加えてそれが利益になるからだ。

参考文献

EIA, Energy Outlook 2017.

EIA, Monthly Energy Review, January 2018.

IEA, Energy Outlook 2017.

『再生可能エネルギー大量導入研究会』資源エネルギー庁

『アメリカの電力革命』山家公雄、エネルギーフォーラム、2017年

山家 公雄(やまか・きみお)
京都大学 大学院 経済学研究科 特任教授
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