「外食のプロ」が宮崎に移住して見つけた夢
『SELF TURN(セルフターン)』とは、企業規模や場所に捉われず、自分の生きがいという本質を探し、自分らしく働ける場を見つけ出すこと。3回目は、外食大手から宮崎の鶏肉加工会社へのSELF TURNを紹介。
「人として、父親として、会社員としての3つの人生を本当に楽しめています」と話すのは、大手外食チェーンを経て宮崎県に移住した木下正和さん、37歳。鶏肉の生産加工で国内十指に入るエビス商事(都城市、桑畑貴社長)のグループ会社で商品開発部長を務めている。
外食大手で多彩な経験
木下さんは宮崎に移住するまで、外食産業のエリートコースを歩んできた。原体験は、出身地の石川県で高校時代に経験したラーメン店アルバイトだ。「お客さんに名前を覚えてもらえるのが何より嬉しく、外食ビジネスを志しました」。卒業後は金沢市内の有名中華料理店で料理人として修行し、やがて東京店を任されることに。その活躍がロイヤルホストグループの目にとまり、新業態の中華店の料理長として招かれ、25歳で店長も兼任。その後、中華チェーン大手の幸楽苑に転じ、エリアマネージャーやグループ数百店の商品開発マネージャーを歴任する。
順風満帆だった木下さんのキャリアに、2011年、思いもよらぬ出来事が降りかかる。東日本大震災と原発事故だ。幸楽苑の本社は福島県郡山市。木下さんの妻のお腹の中には7カ月の子どもがおり、妻の実家がある宮崎県都城市に出産のために帰郷することになった。その後、郡山市の安全は確認されたものの、「0歳の子どもを連れて戻って来いとは言えませんでした」。木下さんは苦悩の末、仕事よりも家族の幸せを選び、都城に移住する。
0→1という新しい仕事
しかしこの選択は結果として、木下さんの仕事の幅を大きく広げることになる。それは事業の多角化で業績を伸ばすエビス商事との出会いだった。木下さんは現在、鶏肉の外食卸や居酒屋経営を行う子会社オネストツリーズの商品開発部長を任されている。
「大手企業での仕事は、既存の店舗や資源を活用し、利益を最大化することでした。一方、今はゼロから『生み出す』というのが私の仕事で、とても面白いし勉強になります。専門職制度が確立されている大手と違って、マルチタスクが求められるのも新しい経験です。『一人総合商社』としての自覚が生まれました」
外食卸では、飲食店に集客力アップやコスト削減に繋がるオリジナルメニューを提案することで、年間の契約店舗数は入社時の5倍以上に増えた。直営店の新規出店や、グループの人事・採用、最近では海外事業にも関わっており、まさに八面六臂の活躍だ。
「大手企業で身に付けたスキルで特に役に立っているのは『数字力』ですね。マーケティングデータや費用対効果をシビアに見て判断する能力は、やはり大きな組織ほど育みやすいものです」と木下さん。
一方で、新しい気づきも多いという。「学歴や会社のブランドで勝負しがちな都会と違って、地域では『人』がすべて。地域は閉鎖的だと言われますが、素直に人と接して飛び込んでいけば、どんどん人間関係が繋がり、仲間が増え、新しい仕事が生まれます」
自然と宮崎や都城という地域への想いも強くなっている。「地域の課題は『発信力』だと思いますが、幸い私には『食』という手段があります。宮崎の鶏肉や野菜、食文化を日本中に、そして世界中に届けることが夢です」
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