まちを「外国人が知る」観光地に 多言語化で競争力を高める

ウェブサイトからスマホ、サイネージ、POSレジシステムまで、一連の情報が連携。ITや外国語が苦手な人でも、多言語での情報発信や接客が容易に行える。エスキュービズムが提供するシステムが、地方のインバウンド戦略を支える。

今、地域振興が求められている中で、インバウンド(訪日外国人向け)市場に注目が集まっている。しかし現状では、外国人旅行者が訪れるのは、ゴールデンルート(東京、富士山、京都、大阪など)をはじめとする一部の地域に限られる。

今後、インバウンドは一極集中型から全国各地への分散・拡散型へと変わっていかなければならない。

それでは、地方がインバウンド対策を強化するには、どうすればよいのか。エスキュービズム取締役の真田幹己氏は、「最初に取り組むべきことは、シンプルです」と語る。

真田 幹己(エスキュービズム 取締役)

「まちを観光地化しなければ、旅行客は訪れません。観光地化とは、多言語化に対応すること。外国人で賑わう地域は、英語の看板が整備されていますし、インバウンドで成功している北海道ニセコ町は、官民をあげて魅力を周知する仕組みを整えました。まずは、訪れるために必要な情報を多言語で発信し、外国人が知る機会をつくり出すことが重要です。今、多くの地域がインバウンドで苦戦しているのは、それを飛び越えて複雑なことをやろうとしているからです」

まち全体を簡単に「多言語化」

2006年に設立されたエスキュービズムは、「今ある課題に、まだない技術を」を事業スローガンに、ECサイトの構築、店頭POSシステム、家電など、様々な事業を行っている。ソフトもハードも自社でつくれるため、課題に合わせた独自のサービスを創出できる。ファミリアやタビオなど様々な企業にソリューションを提供してきた。その強みを今、地方でも発揮しようとしている。

それが訪日外国人の旅行前から旅行中、旅行後まで、一連の行動に合わせた「おもてなし」を実現するシステムだ。事前の情報収集で閲覧するウェブサイトをはじめ、観光施設や商店街に設置されたサイネージ、店頭のPOSレジシステムまでをつくり、連携させることができる。

「外国語サイトで地域の情報を発信すると、スマホ向けに自動変換され、サイネージとも連動してプロモーションが行われます。翻訳機能付きのシステムであり、サイトの更新も簡単です。自治体や商工会、各店のオーナーが観光施設や店舗の情報、イベント情報を日本語で入力すれば、自動的にまち全体が多言語化されます」

観光振興の担当者や商店主の中には、ITに抵抗感を持つ人もいる。エスキュービズムは、そうした人でも使いやすいシステムを実現している。

「当社は小売・流通業のIT化を進めてきた実績があり、中小の店舗オーナーのニーズも把握しています。そうした経験から、シンプルでわかりやすいシステムにすることが、何よりも重要だと考えています」

エスキュービズムのシステムは、ウェブサイト、スマホ、サイネージの情報を一元管理するものであり、運用に多大な手間やコストはかからない。一斉にスピード感を持ってまち全体に情報を広げられ、直近のイベント情報の発信も手軽にできる。それにより、例えば、その地域を訪れた外国人旅行者に「今、ちょっと時間があるから行ってみよう」と思わせるような仕掛けをつくることも容易になる。

接客時のトークも自動で「翻訳」

インバウンド対策を進めるには、ITへの抵抗感とともに、外国人に対する苦手意識を払しょくする必要もある。

普段、外国人とのコミュニケーションの機会が乏しい人にとって、外国人を接客するのはハードルが高いように思われがちだ。こうした課題に応えるため、エスキュービズムはタブレットを使った「翻訳接客」のシステムを提供できる。

翻訳接客では、外国人がタブレットに話しかけると、タブレットが翻訳して回答を検索し、結果を画面に表示する。店員・店舗スタッフは、その画面を見せながら接客を行うことができる。タブレットの音声翻訳を通して、お客と店員がリアルタイムでコミュニケーションをとることも可能だ。

「AIやIoT(モノのインターネット)などの先端技術をトリッキーに利用するのではなく、すでにある技術を組み合わせて、現場が使いやすいシステムにしています」

また、訪日外国人の消費を喚起するには、それに対応した決済手段を準備しなければならない。

エスキュービズムが提供するPOSレジシステムは、クレジットカードや銀聯の決済に対応するほか、ワンボタンで多言語のサポートセンターにつながる機能を搭載。突然の外国人の来店にも、サポートセンターを介した通訳で対応することができる。タブレットを利用したPOSシステムなので、小規模店舗でも低コストで導入することが可能だ。

エスキュービズムは、パソコンやスマホのウェブサイト、サイネージ、POSレジシステムまでを手掛ける。それらが連携することで、地域の情報を、訪日外国人に「知ってもらう」機会をつくり出す

「難しくない」システムを実現

「エスキュービズムは、テレビなどの家電やIoTデバイスの開発も行っており、ハードウェアのノウハウも蓄積しています。ハードとソフトを組み合わせて、誰にとっても『難しくない』システムをどう実現するか、テクノロジーとアイデアをどう融合させるか、そのバランスをとることができます」

個人商店、小規模店舗の存在は、地域の個性をつくり出す一助となる。エスキュービズムのシステムは、そうした店舗でも運用しやすい。一連の情報がつながり、店舗単独では難しかった施策も可能になることで、まち全体の競争力を高められる。

「国が政策として訪日外国人3000万人の目標を掲げたのは、裏を返せば、製造業で発展してきた日本が、これからは観光業で成長を目指すというメッセージとも受け取れます。今、地方は、そのパラダイムシフトにどう対応するかが問われています」

多くの地方がインバウンド対策に力を入れている中で、新たな取り組みで先行することは、独自の強みを築く端緒となる。横並びから脱し、挑戦することが地方に求められている。

真田 幹己(さなだ・もとき)
エスキュービズム 取締役

 

お問い合わせ

  1. 株式会社エスキュービズム
  2. TEL:03-6430-6732
  3. URL:http://tech.s-cubism.jp/casestudy/

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