戦争で失われた「伝統と文化」を再生 首里の町が観光で成長
沖縄戦で失われた、琉球王国の首都・首里の景観と文化。首里まちづくり研究会は、伝統行事の再生などによって地域住民の“誇り”をよみがえらせ、観光振興による地域活性化を実現した。
沖縄県首里地区は1429年以降450年間もの間、琉球王国の首都として栄えた城下町である。その中心にある首里城跡は、王国の政治や独自の文化の礎となった歴史的価値が評価され、2000年12月に世界遺産にも登録されている。
その首里地区で、観光振興を目的として、景観づくりというハード面と、地元住民の郷土愛の再構築というソフト面の両面から、根本的なまちづくり、ひとづくりのチャレンジが行われている。その立役者となった地元発のリーダーが、NPO法人首里まちづくり研究会事務局長の山城岩夫氏だ。
首里城だけでない地域の魅力
伝統行事“お水取り”を再生
戦前は国宝にも認定されていた首里城だが1945年の沖縄戦で全壊、その本格的な復元が1980年後半から開始された。沖縄県国頭村出身の山城氏もその一員として東京から呼び戻され、造園師の経験を活かして首里城の復元に携わった。
「1992年、国営公園として首里城の一部が公開されると、年間260万人が訪れる沖縄でも有数の観光スポットになりました。ところが、観光客の多くはバスツアーなどで首里城を見るだけで帰ってしまい、誰も首里の町を歩いていないという現状でした」
琉球の歴史と文化の中心となった首里城の観光は、周辺地域の当時のライフスタイルに触れることにより理解が深まり、観光客の満足度も向上する。しかし首里地区において、戦争で失われたのは景観だけではなく、地域の文化そのものでもあった。そこで、地域住民の歴史と文化の理解を実現し、地域を活性化させるべく発足したのが首里まちづくり研究会だ。
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