元商社マンの知事が仕掛ける「愛媛県庁・総合商社戦略」

四国一の経済力を誇る愛媛県は、一次・二次産業や観光分野で優れた資源を持つ。これらの「オンリーワン」を磨き、全国、さらには世界に発信しようと中村時広知事はさまざまな施策を展開している。知事に県の未来構想を聞いた。

中村 時広(愛媛県知事)

産業の垣根を超えて連携

――愛媛県の地域資源やポテンシャルをどのように捉えていますか。

まず前提として、「オンリーワン」という視点に立つことが地域資源活用で意識するべき方向性だと思っています。日本の地域はそれぞれ歴史も伝統も違い、人情も自然環境も違います。その違いに魅力をどう見つけて分析し、磨いていくかに地方創生の成否の鍵があるのではないかと思います。ですから何よりもそれぞれの地域、ふるさとの魅力分析が非常に大事なのです。

この視点から愛媛県というフィールドを捉えると、まず見えてくるのが特徴的な産業構造です。愛媛県は東予・中予・南予で主要産業がまったく異なっており、それらがバランス良く機能しています。

具体的に見ると、まず東予は製紙・紙加工業、造船、タオルなどの二次産業が集中しています。また四国最大の都市・松山市を中心とする中予では観光や情報関連などのサービス産業が発達。南予は一次産業が中心で、生産量日本一の柑橘類を中心とする農業や、ヒノキなどの林業、黒潮の流入や深い入り江のリアス海岸などの特長を活かした養殖業をはじめとする漁業が盛んです。

通常ならば混在するはずの各産業がこれほど鮮明に分かれている構造というのは、本県の大きな強みとなっています。

ただ、近年のグローバル化や、人口減少等に伴う国内市場の縮小のスピードは速く、同じことを続けていては衰退していく時代に入ってきました。産業の垣根を越えて連携し、新たなる付加価値を生み出すことが必要になっています。

2018年度のターゲット指標(愛媛の未来づくりプラン第2期アクションプログラムより抜粋)愛媛県の特徴的な産業構造

愛媛県庁を総合商社化

――具体的にはどのような産業育成施策に取り組んでいますか。

県では、優れた技術や産品を集約した「スゴ技(高い技術力)」、「すごモノ(優れた製品)」、「すご味(全国に誇れる農林水産物や加工品)」、「スゴVen.(独創的なベンチャー企業)」に関するデータベースを2011年から順次構築してきました。さらに2012年には、県庁内に「営業本部」を立ち上げ、データベースも活用しながら、県内生産者・事業者等の販路拡大のための営業活動を始めました。私自身が商社出身ということもあり、そこから「愛媛県庁を総合商社化する」というアイデアを実現したものです。

初年度はビジネスに関する基礎的な知識を育てるところから入ったので県関与年間成約額の実績は8億円程度でしたが、2年目は27億円、3年目は56億円と、毎年倍増ともいえる成長を続けています。今年度は営業本部の組織再編、金融機関や市町職員の参加によるさらなる「オール愛媛」体制の構築などで大幅な機能強化を図っており、成約額70億円を目標にしています。今後、営業本部は庁内の「横串組織」として、より機動的な営業活動を展開したいと考えています。

また、愛媛県は、紙産業技術センターや繊維産業技術センター、みかん研究所など、県内の特産品の価値を高めるために様々な研究機関を抱えています。付加価値の向上や産業間の連携を考えると、技術職員の役割はとても重要です。人材育成に加えて、最先端技術やコストダウン技術の強化を進めていきます。

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