よそ者発!地域、自治体を活気づけた「音楽×花火」という新発想
KNT-CTホールディングスが社内の「連携力」を活かし、2014年に山形県戸沢村で開催した「最上川ミュージック花火」。そのイベントは多くの人を呼び込み、地域を元気づけ、自治体を動かし始めている。
近畿日本ツーリストのホームページには、自治体向けセミナーの案内や地域の課題解決事例を掲載されている。(http://www.kntcthd.co.jp/chiiki/)
――音楽と花火を組み合わせるというイベントは、どのようにして生まれたのですか。斉藤
「最上川ミュージック花火」は、専門の音楽家による選曲で音楽構成し、約60分間のショータイム全体が“起承転結”に構成され、約1万発の花火が音楽と完全シンクロした “音と花火”のスペクタクルショーです。
2013年1月に、近畿日本ツーリストとクラブツーリズムが経営統合し、KNT-CTホールディングスが誕生しました。クラブツーリズム、地域事業部、国内旅行部が一緒になって定期的にミーティングを行い、地域の活性化につながる新たな共同イベントを考えていました。
夏の花火には、高い集客力があります。その話をしている時に、メンバーから「ミュージック花火に挑戦したい」という提案があったのです。
また、2014年のJRデスティネーションキャンペーンの開催地が山形県に決定し、それとの連携も考えていたところ、戸沢村での開催が決まりました。
初めて戸沢村の開催現場を訪れたときは、最上川を望む素晴らしい自然の情景に魅了されました。地元の人には当たり前の風景かもしれませんが、そこに居ないからこそ、わかる良さもあります。この場所でミュージック花火を開催したら観光で来られる方々、また地域の方々にとっても感動的なイベントになるのではと感じました。さらに夜のイベントを開くことで、宿泊需要が増え、地域経済の活性化にもつながります。
イベントから地域の交流へ
――渡部村長は、ミュージック花火の企画を初めて聞いたとき、どう思われましたか。渡部
まさか戸沢村で、1万発もの花火が打ち上がるとは夢にも思っていませんでした。
花火というと、無料で見るものだという感覚もありましたが、いざ開催してみると、まるでコンサートのようなダイナミックな花火のショーを見て、当初は厳しいことを言っていた方からも、「すごい花火だ」、「またやろう」といった言葉をいただきました。
2014年の「最上川ミュージック花火」は、人口約5000人の戸沢村に、県内外から約1万8000人もの観覧者が訪れました。
斉藤 当社の強みは、企画の立ち上げから商品造成・販売、そして運営のオペレーション、さらには集客までを、グループ内で連携して手掛けられることです。
クラブツーリズムは全国に300万世帯の会員を持ち、また、近畿日本ツーリストに関しては、企業や教育旅行など、さまざまな組織に営業ができます。さらに、近畿日本ツーリスト個人旅行では、店頭やウェブにおいて個人旅行に特化しており、グループ内の各社が連携する事により、あらゆるターゲット層に直接リーチができる強みもあります。
梶田 地域の関係機関、自治体の方々からご協力いただけたことも、「最上川ミュージック花火」が成功した要因だと思います。従来の旅行業界は、旅先である地域の人たちに対して、どんな貢献をするのか、何が残せるのかという発想に乏しいところがありました。
食事や宿泊、お土産といった直接的な経済効果だけでなく、地域の人との交流を生み出すことも大切です。「いつも食べているものが、外の人には、こんなに美味しいと思ってもらえるのか」など、交流によって、地元の人たちが自分たちの地域に自信を持てるようになります。数量では測れない価値も重要なのです。
地域一体で魅力を創出
――「最上川ミュージック花火」は、今年も継続して開催されることになりました。渡部
昨年の実施を受けて、周辺の自治体を含めて「今年もやろう」という話になり、地域側の主体的なイベントとして行います。せっかくたくさんの人が集まるわけですから、今年は地元の伝統芸能を楽しめる場を設けるなど、地域の魅力を多面的にアピールしていきたいと考えています。
実は、戸沢村は、国民健康保険の発祥地でもあります。もともと、地域には助け合いの土壌があり、そうした文化は現在も生き続けています。
戸沢村を含む8市町村は、「新庄最上」という一つの地域です。戸沢村だけでなく、地域全体が良くならなければ意味がありません。今、各市町村には、各地の伝統芸能を一つ出していただけないかという話をしていて、地域で協力してイベントを盛り上げていきます。
また、今年7月から、戸沢村には近畿日本ツーリストさんの社員が1名来られていて、観光振興に力を貸していただいています。戸沢村には、最上川船下りなどの観光や、パプリカや荏胡麻などの特産品もあります。そうした資源を活かすことで、「最上川ミュージック花火」を一過性の効果に終わらせず、地域の活性化につなげたいと考えています。
梶田 新庄最上エリアには広域連携のベースがありますから、将来的には、地域の観光マネジメントやマーケティングを統括する組織「DMO(Destination Marketing / Management Organization)」にもつなげていきたいと考えています。斉藤
当社の社員が戸沢村に入り、外からの目線でいろいろな素材を発掘し、お互いに議論をしながら、観光のあり方を進化させることに貢献できればと考えています。
また、「最上川ミュージック花火」も毎年プログラムを変えていますので、今年はまた違うストーリーを楽しめます。認知度を上げて、「最上川ミュージック花火」を新しい地域のブランドにしていきたいと考えています。
渡部 1時間、全編にわたって音楽が流れ、大小さまざまな花火が組み合わさって、起承転結のあるストーリー性を持たせたイベントは、他にはないと思います。今年は9月12日開催の予定です。迫力ある音楽と花火のコラボレーションを、ぜひ体験してください。
お問い合わせ
- 近畿日本ツーリスト株式会社 地域誘客事業部
- TEL:03-6891-9630
- E-mail:jichitai@or.knt.co.jp
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