2013年9月号

地域未来構想 大阪府

攻撃できる特許が成功の鍵

山本秀策(山本秀策特許事務所)

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山本秀策特許事務所は、国際特許で国内トップクラスの実績を持つ知財の専門家集団だ。所長の山本秀策氏は「企業のトップは知財を経営戦略に位置づけ、ビジネスの武器として活用すべき。そうしなければグローバルで生き残ることはできない」と説く。

知財戦略のミスが招いた凋落

メイドインジャパンの品質を世界に知らしめた日本の家電、エレクトロニクス産業が今、中国、韓国などのアジア勢に押され、すっかり元気を失っている。山本秀策氏は厳しい状況に陥った理由を「知財戦略のミス」と言い切る。

山本秀策特許事務所 所長 山本秀策氏

1980年代初頭、日本の自動車、家電、半導体製品がアメリカ製を凌駕して世界中にあふれ、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ともてはやされた。だが、その裏でアメリカはしっかりと利益を稼いでいたという。

「たとえば半導体産業だけでも、日本の企業はアメリカに年間何千億円もの特許使用料を支払っていました。日本製品が売れるほど、アメリカが儲かる仕組みになっていたのです」。

アメリカが特許を押さえる技術に改良を加え、世界に輸出するビジネスモデルを採っていたがゆえの実態だった。

ひるがえって現在の日本と新興国の関係はどうか。かつてのアメリカと日本の関係にたとえるなら、日本が莫大な特許使用料を得ていてもおかしくないはず。だが、現実はそうなっていない。

山本氏は、「日本企業の特許保有件数は世界でも有数ですが、問題はその中身。知財が形になる前段階から将来のビジネス展開の方向や競合関係などを予測し、法的事項を念頭に置きながら権利化、権利の行使を戦略的に行ってこなかった。事業戦略を優位に進めるための特許出願の発想が足りない」と語気を強める。

経営戦略としての知財を学ぶ

山本氏が弁理士を目指すきっかけは、大学卒業後に働いていた食品メーカーの研究者時代にある。自身が開発した新麹菌を特許出願することになった際、外部の弁理士に委託した申請書類を見てあ然とした。単に特許出願の手続きを代行したのみで、ビジネスを見据えた内容になっていなかったからだ。

その時に弁理士という職業の存在に興味を持った山本氏は、知財の専門家として生きることを決め、同社を退職。

以後、アメリカのロースクールで特許法・商標法を学び、帰国後に大阪で特許事務所を開設した。

知財先進国アメリカで企業が経営戦略として知財を位置づける様を目の当たりにしてきた山本氏は、「Speed&Quality」を合言葉に次々に顧客からの依頼を解決してきた。その範囲は特許や実用新案、意匠、商標、不正競争、営業秘密、技術移転などの知財関連の出願や権利化手続き、訴訟、仲裁、ライセンシングまで多岐にわたる。

中でも得意とするのはバイオや医薬、電子・情報、通信などのハイテク分野。

その根底にあるのはサイエンスと法律だ。「仮に研究内容が優れていたとしても、持続的に競争力を維持、強化するためにこそ知財を守り活用しなければ、お金を生み出さない」と山本氏。

そのために弁理士だけでなく特許技術の専門家、世界各国から集まった弁護士、翻訳家も置いて知財戦略を練る、国内では稀有の特許事務所だ。

180名に及ぶスタッフの中には15ヵ国以上の外国人所員が60名在籍し、ダイバーシティ(多様性)を実現しながら活発に議論を戦わせ、思考の多様性を生み出している。

"世界標準"の同事務所には各国から依頼が集まってくる。中でも約8割を占めるのがアメリカからの案件だ。

その中にはインフルエンザ治療薬のタミフルや有機ELの関連特許も含まれる。後者は2000年にノーベル化学賞を受賞した研究成果だ。また、昨年のノーベル化学賞のGタンパク受容体も同事務所の案件だ。

特許を武器に攻撃を仕掛けよ

今後は日本企業からの案件をさらに増やしたいと考えているが、「問題は日本企業の知財に関する意識の低さ」と山本氏は指摘する。

「アメリカの特許法はそもそも他者を排除する権利ととらえられている一方で、日本では、特許権は他社から自己を守る権利という認識がなされている。防御することで実際には他者を排除できるのだが、日本人は争いを好まず、特許を武器に攻撃をかけ他者を排除しマーケットで優位な地位を築く発想がない。このままではますますアジア勢に侵食されるばかりだ」と警鐘を鳴らす。

まず日本企業が取り組むべきこととして、山本氏は「知財を、事業戦略を支える重要な施策として位置づけること」と言う。

「企業が事業計画を構築する際には、その構築計画に沿った知財権を入手する手立てが必要。そのためには、知財担当トップはCEOと直接やりとりしながら知財戦略を考え、それを研究所や開発部門に伝え、資金と時間をかけて知財を生み出すための研究に取り組むべきだ」と持論を説く。

サービス業でも知財武装を

グローバル化がますます進む中で、日本の産業はどこで戦っていくべきなのか。山本氏が着目するのは、産業分野でいえばバイオ、ライフサイエンス、電子・情報・通信分野、中でも経営判断の速いスピード感をもって事が運ばれる中小企業は有利だと見る。

「中小企業の中には世界に誇るべき技術を持っているところが多くあります。そして、これらの中小企業は世界を視野に入れたものづくりが求められています。特許、知財で攻め込まれる前に、こちらから攻め込んでいかなければなりません。企業の経営戦略に沿った知財戦略を国際的視点で実行できるようにサポートします」。

そしてもう一つ、山本氏は「サービス業こそ次世代の産業」だと言う。

「たとえば、めがねはさまざまなデザインがあり、本人に合わせためがねを売るためにアドバイスをする。それをどう限られた時間内で処理し、お客さんに喜んで帰ってもらうか。これがデザイン、サービス業の本質だ」。

サービスはビジネスモデルパテントとして特許登録されるが、米国に続き中国がものすごい勢いで出願を増やしている。日本はここでも後れを取っているという。「これからTPPに参加すると世界を相手に戦う時代になる。同じ土俵でどれを買ってもいいということになれば、横からさらわれないように知財でしっかり防御し攻撃にも備えておかなければならない」と説く。

事務所の窓からは大阪城とその周囲を取り巻く緑が一望できる。「外国から見れば東京も大阪も同じ。むしろ中央から離れている分、物事を俯瞰して見ることができる」。常に世界というレンズを通して日本を見る山本氏ならではの発想だ。

国際特許で数多くの実績を積み重ね知財問題に精通した同事務所は、丸裸に近い日本企業を知財戦略で"武装"させることができる頼もしいパートナーだ。日本企業の知財戦略を後押しすることが、ひいては「日本の産業を元気にすることにつながる」と山本氏は信じている。

山本秀策(山本秀策特許事務所)
大阪大学工学部発酵工学科を卒業、米国特許庁パテント・アカデミー修了。79年、山本秀策特許事務所を大阪に設立。その後、東京事務所、福岡事務所を開設し、現在に至る。弁理士登録は1974年。大阪大学医学部招聘教授、崇城大学客員教授、東北大学大学院非常勤講師。企業経営者がリーダー論を語る「賢者の選択」にも出演。山本が経営哲学を語る「知財で戦え―Gamechanging IP」(ダイヤモンド社)が2013年5月に出版された。
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