長野県飯田市「住民参画主体」 行政の枠組を越えた地域経営

地域づくりの事業構想で最も大切なことは、地域経営をする者の意志である。長野県飯田市では牧野市長が地域の将来像を明確に示し、持続可能な地域を目指す。住民参画を主体とし、新規事業に取り組み、自立した地域経済の構築を進めている。

飯田りんご並木は、かつての「飯田の大火」の復興過程で当時の飯田市立飯田東中学校の生徒達の提案により生まれた。大火の教訓から町の防火帯としても機能している

あらゆる分野で全国的にもモデルと称される飯田市は、どのような地域なのだろうか。人口約10万5千人、面積の85パーセントが森林。市長の牧野光朗氏は「どこにでもある中小都市。しかし地域の住民活動、ものづくり、街づくり、人づくりなど様々な活動に取り組む、多様性のある街」だと快活に話す。

飯田市をはじめとする地方の都市は、人口減少、少子高齢化が加速する現代において、経済、産業ともに非常に厳しい状況が多く見受けられる。今後どのように地域をつくるべきかが、地方都市の共通の課題である。牧野市長は「山・里・街の多様性が特徴の飯田市においては、それぞれの地域の個性をいかした街づくりをすべき」と指摘する。その例が、飯田市の中心市街地に位置し、60年の長きにわたり代々中学生が育てる「りんご並木」であり、素晴らしい景観を持つ郊外の「天龍峡」の再生事業であり、飯田市独自の「中山間地域」振興事業などである。飯田市では、各地域の特徴をいかした多様性ある街づくりに力を入れている。しかしはじめから“地域の特徴”の重要性に気づいていたわけではない。

「街中、郊外、中山間地域など各地の特徴を全て合わせて飯田であるにも関わらず、高度成長期には、多様性という地域らしさを軽んじていました。それによって地域の魅力が大幅に減り、各地のアイデンティティをなくしてしまったのです」

その経験から、各地の多様性や拠点集約連携型都市構造を重要視した取り組みを始めていく。「飯田市には20地区ありますが、その20地区の地域らしさを保持しながらある程度の拠点集約を考えています。お互い連携するような都市構造をどれだけ作っていけるのかが大事です」。地域文化とは地域の個性であり、それらが人を惹きつけていく。

定住自立圏と人づくり

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