万博が生んだ日スイス連携 関西で進む再生医療スタートアップ協業

(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2026年3月4日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

万博が開いた扉――関西でスイスと日本のスタートアップ連携が進化

近畿経済産業局では、万博を契機に交流が深まった、主に関西に立地する総領事館・領事館との関係を一層強化し、関西と世界をつなぐ交流の促進に取り組んでいます。

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今回は、在大阪スイス領事館のフェリックス・メスナー領事に、万博の成果や関西での今後の取組に関する展望を伺いました。なお、本記事の内容は、インタビュー実施時点(2025年11月)の情報に基づいています。

関西を“実装フィールド”に——中之島クロス×Wyss Zurich、MOUで加速

Q:万博期間中の最も重要な成果は何でしたか?

特にスタートアップ支援において、在大阪スイス領事館が大阪で活動を始めてからのこの2年間は、関西という“実装フィールド”の可能性に賭け、具体的な成果につなげることができた時間となりました。この期間における最も大きな成果は、万博で高まった注目を背景に、最先端の医療・ライフサイエンス産業化拠点「中之島クロス」との協働が2件のMOUに結実したことです。

万博の閉幕日にスイスでWyss Zurichとの署名が行われました。MOUの締結により、「中之島クロス」の運営を担う(一財)未来医療推進機構の理事長である澤芳樹氏が医療分野において求めていたスタートアップ成長を加速する機能を、こちらから提供することができ、スイス側にとっても関西で医療・ライフサイエンス分野における非常に強力なパートナーを得たという結果を生み出すことができました。領事館としては、それらの調整を担い、再生医療という重要な分野において、スイスと関西の強い結びつきの創出に貢献できたと考えています。

※Wyss Zurich:ETH Zurich(スイス連邦工科大学チューリッヒ校)とチューリッヒ大学(UZH)の共同アクセラレーターで、再生医療・ロボティクス・医療機器/バイオニクス分野の大学発イノベーションを臨床・事業化へ橋渡しすることを目的とした組織。

Wyss Zurichとの署名

万博を活かし、手厚いスタートアップ支援

Q:その成果はどのような背景や準備によって実現されたのでしょうか?

在大阪スイス領事館のスタートアップ支援分野としての、今年の支援社数は98社に達しました。大阪で開催された医療系イベント(「Japan Health」、「Global Health Challenge」)では、同館からの紹介企業が総数約700社のエントリー中から最優秀外国スタートアップに選出されました。また、東京で開催された「SusHi Tech Tokyo 2025」では、スイスから10社のスタートアップを伴い参加し、私たちの出展ブースは最も革新的な賞であるパビリオン賞を受賞しました。

関西とのネットワーク構築の観点では、万博の開催前から京セラ、Sysmex、Microsoft AI Co-Innovation Lab Kobe(神戸ラボ)、武田薬品工業、任天堂、SCREEN、村田製作所、塩野義製薬といった企業を訪問しており、スイス側の関係者が来訪した際には企業訪問を組み込みやすい環境を整備してきました。具体的には、総領事館や領事館などの外交関係者が毎月関西の拠点を訪問する「サイエンス&テクノロジー外交サークル」を立ち上げ、その枠組みを活用しネットワーク構築に注力しました。

万博期間中には関係者とともに住友、パナソニック、NTTなどの企業パビリオンを巡るなど、特に企業との接続に軸足を置いてきました。会場内のスイスパビリオンにおいてもピッチイベントなども開催し、スイスのスタートアップと様々な企業幹部や投資家との密度の高い対話を実現するなど、あらゆる努力をしてきました。私たちが「入口を開く」役割を果たせたと考えています。

万博の様子

スタートアップ協業の鍵は、国境を越えた「相互の信頼」

Q:今後、関西で国際交流やビジネス促進のための取組を予定されていますか?

私が考える関西の特徴は、企業における製造現場・R&Dセンターといった研究開発拠点等にアクセスしやすいことです。関西企業はとてもオープンで、スタートアップを連れていくことを非常に喜んでくださる。また、関西にはものづくりの技術が多数集積しており、企業と面談する際は、CEOだけではなく、エンジニアやイノベーション部門、企業系ベンチャー投資(CVC)と、会議室ではなく、現場を見ながら対話しやすい環境にあることは、スイスのスタートアップにとって特に重要です。

今後の取組としては、スタートアップは忙しくイベント参加は慎重ですが、日本のスタートアップと相互に事業をピッチする場を増やしていきたいと考えています。具体的には、今後セクターごとのグループを編成し、2026年1月はナノテックと量子、2月は新エネルギー分野でスイスのスタートアップ企業の来日を検討しています。

将来的には、例えば科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフォーラム)などの大きな舞台でスイスのスタートアップがピッチする機会を獲得していくことにも挑戦していきたいと考えています。

またこれからは、関西経済同友会、大阪商工会議所、JETRO、NEDO、産総研などを含め、さらなる連携の幅を拡げていきたいと考えています。鍵は、相互の信頼です。信頼できる担当者に「面白いスタートアップがいる。あの企業をつながれないか」と気軽に相談出来る体制があることが理想で、見通しが利く適正規模の関西だからこそ実現可能です。

関西はいわば日本における「隠れたチャンピオン」に位置づけられる地域だと考えています。万博という世界最大級のイベントが行われ、さらにその間に2名のノーベル受賞者が関西から誕生したということがわかりやすい裏付けになると思いますし、科学技術が非常に卓越している地域と認識しています。今後はこのような素地をもつ関西地域において、あらゆる機関・企業とうまく連携できる関係性を構築していきたいと考えています。

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近畿経済産業局 公式note