リメイクにはうんざり? 子供の頃の記憶をカネに変える「ノスタルジア商法」

(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年6月6日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

モアナと伝説の海 イメージ画像
「モアナと伝説の海」第1作は今から8年前の2016年、今20歳の若者が12歳だった頃に公開された。「モアナと伝説の海2」は日本では2024年12月6日公開予定だ。(Copyright : Disney)

もしあなたがミレニアル世代やZ世代で、最近、リメイク、再演、続編、前日譚(プリクエル)にこだわるような現代文化に浸っているのなら、「これって前にも見たことがあるんじゃない?」と感じたことはないだろうか。

2004年のアメリカ映画『ミーン・ガールズ(Mean Girls)』のリメイクや、2010年の米3DCGアニメ映画『メガマインド(Megamind)』や『モアナと伝説の海(Moana)』の続編が発表される中、現代のポピュラーエンターテイメントは、過去の記憶を継続的に再利用することが多いように見える。実際、過去の楽しい記憶を金儲けのために利用する行為には、「ノスタルジア商法」という名前がつけられている。

ノスタルジアという言葉は、ギリシャ語のnostos(帰郷)とalgos(痛み)に由来する。別の言い方をすれば、ノスタルジアとは、帰りたいけれど帰れないときに感じる特有の痛みを指す。ノスタルジアとはホームシックなのだ。

ノスタルジックなコンテンツに触れるとき、私たちは本質的に故郷に連れ帰ろうとするコンテンツに触れている。その故郷とは、しばしば、私たちがまだ大人のストレスに苦しめられていなかった子供時代や、実際には経験していないかもしれない、素朴だと感じられる時代へ帰還することを表す。そこでの過去は、混沌とした現在から避難できる場所として描かれている。

私たちは『オズの魔法使い』のドロシーのように、ルビーの赤い靴のかかとをカチカチと鳴らしながら「おうちほど良い場所はない」と唱えている。しかし私たちは、その言葉自体が示す「おうち」に帰ることはできないのだ。

どの20代、30代もみんな同じではない。住宅ローンのために貯金をしているかもしれないし、ただひたすら家賃を払うのに苦労しているかもしれない。出会い系アプリを使っているかもしれないし、なんとかして育児を理解しようとしているかもしれない。現在の課題が何であれ、当メディアの「クォーターライフ」シリーズには、グループチャットで共有したくなる記事や、あなたが一人ではないことを思い出させるための記事がある。

ホームシック……金儲けのためのね!

2024年5月15日、『ウィキッド(Wicked)』の劇場予告編が公開された。これはノスタルジア商法の新たな一章なのだろうか?この映画には、ニコロデオン(Nickelodeon、米国の子供向けケーブルTVチャンネル)で歌って踊っていたアリアナ・グランデ(Ariana Grande)氏が登場する。彼女はミレニアル世代やZ世代にとってはノスタルジックな記憶を呼び起こす人物だ。しかし、ノスタルジア商法のトレンドというものは、何もミレニアル世代やZ世代に限定されるものではない。

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