キャリアオーナーシップとは? 不確実な時代に、自律したキャリアを掴むために必要な視点

「このままでいいのかな?」「5年後の自分がまったく想像できない」「会社に頼っていて、本当に大丈夫?」
そんなモヤモヤを抱えている方は、決して少なくありません。終身雇用が揺らぎ、副業やリスキリングが当たり前になった今、“誰かがキャリアを決めてくれる” 時代は終わりました。鍵を握るのは、自分の人生を自分の手で切り拓く力――「キャリアオーナーシップ」 です。本記事では、キャリアオーナーシップの核心と実践ステップ、そして専門家の活用法までをわかりやすく解説します。
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「キャリアは会社が決めるもの」だった時代の終わり

かつての日本企業では、「キャリアは会社が決めてくれるもの」でした。新卒で入社をして、年功序列で昇進して、定年まで安定して働く。そんな働き方が当たり前だった時代が、つい最近までありました。
でも、今は違います。人生100年時代の到来、終身雇用の崩壊、副業の解禁、生成AIによる仕事の激変……。これまでの「会社任せ」では、通用しない時代になってきました。
そんな中で注目されてきているのが、「キャリアオーナーシップ」という考え方です。

キャリアオーナーシップとは、人生のハンドルを握り直すこと

キャリアオーナーシップとは、シンプルに言えば「自分のキャリアの主導権を、自分自身で握る姿勢」です。
会社や上司に言われるままではなく、自分で考えて、自分で決めて、自分で行動する。そんな姿勢を指します。
ただし、これは単に「転職を繰り返す」という意味ではありません。日々の仕事への取り組み方、新しいスキルを身につけるかどうかの判断、社内での動き方まで、すべてが「キャリアオーナーシップの実践」です。あらゆる場面で、「自分で考え、自分で決め、自分で行動する」、その根源であり、判断の拠りどころである「人生の軸」のようなイメージです。
キャリアオーナーシップには、大きく4つの要素があります。

自分を知る 自分の価値観や強み、興味、望む働き方を理解し、言語化すること
方向性を決める 5年後、10年後にどうなっていたいかの「ありたい姿」を具体的に描くこと
行動を選ぶ 目標に向かって必要なスキルや経験を、自分から積極的に選んで身につけること
●学んで適応する 時代や環境の変化に合わせて、柔軟に軌道修正していくこと

    なぜ今、キャリアオーナーシップが重要なのか?

    この考え方が注目される背景には、働く環境の大きな変化があります。主に次の3つが挙げられます。

    1.スキルの賞味期限が短くなった

    経済産業省の調査によれば、AI・DXの進展で、私たちは職業人生の中で何度もスキルの大幅な変更を求められるようになります。いま持っているスキルが、10年後には陳腐化してしまう可能性もあります。

    2.働き方が多様化した

    正社員、副業、フリーランス、プロジェクトワーク……。企業との関わり方は人それぞれになりました。「正社員だから安心」という時代は終わり、自ら市場価値を高める必要があります。

    3.キャリア=人生そのものになった

    人生100年時代では、キャリアは単なる「職歴」ではありません。どう働き、どう生きるか。その全体が「自分の人生の物語」になっています。

    キャリアオーナーシップがもたらす4つの変化

    主体的にキャリアと向き合うことで、こんな変化を実感できるはずです。

    1.モヤモヤがスッキリする
    漠然とした不安や迷いが、具体的な課題として見えてきます。そうすれば、何をすべきかも明確になります。迷ったときの拠りどころ、羅針盤のような存在になります。

    2.判断軸ができ、周囲に振り回されなくなる
    自分の軸がしっかりしていれば、異動や転職のタイミングでも、冷静に判断できるようになります。いわゆる転機の場面で、その意味を冷静に振り返ることができます。

    3.学びに一貫性が生まれ、点が線につながる
    目的を持ってスキルアップに取り組むので、バラバラだった知識や経験がつながって、より大きな力になります。それはつまり、抽象化や俯瞰をする高い視座を手に入れるということにつながります。

    4.「自分で選んだ道」だから、仕事がもっと面白くなる
    自分で選んで決めた道だから、責任感とともに、やりがいも大きくなります。自分の「選択」を、「正解にする」ための行動につながります。

    「一人で考えるのは限界…」──そんな時こそ専門家を

    「自分の価値観って何だろう?」「将来どうなりたいんだろう?」と一人で考えるのは、なかなか大変です。
    そんな時に頼りになるのが、国家資格を持つキャリアコンサルタントです。
    「キャリア相談=転職相談」と思われがちですが、実際は違います。キャリアコンサルタントの本来の役割は、あなたの自己理解と意思決定をサポートする伴走者です。答えを押し付けることなく、対話を通じてあなた自身が答えを見つけられるよう支援してくれます。具体的に次のようなメリットがあります。

    ●思い込みに気づける
    「私はマネジメントに向いていない」と思っていても、実はただの思い込みかもしれません。客観的な視点で、新しい自分を発見することができます。
    ●選択肢が広がる
    社内異動、副業、学び直し、ボランティア活動……。一人では思いつかない(視野に入っていない・視野に入れていない)道筋が見えてきます。
    ●最初の一歩が見つかる
    「将来が不安」「今の仕事がしっくりこない」といった漠然とした悩みでも大丈夫です。そのきっかけから、さまざまな角度で話をしているうちに、具体的な行動が見えてきます。
    ●会社の制度も活用できる
    最近では、厚生労働省が推進する「セルフ・キャリアドック制度」を導入する企業も増えています。社員が定期的にキャリア相談を受けられる仕組みです。あなたの会社にもこうした制度があるかもしれません、ぜひ社内の情報にアクセスしてみましょう。

    最後に:人生の主導権は、あなたにある

    キャリアオーナーシップは、「何でも一人で決めなければならない」ということではありません。孤独な戦いではないのです。
    大切なのは、**「自分の人生の主人公として、どう働くかを考える姿勢」**です。
    情報を集めて、考えて、時には専門家の力も借りながら、少しずつでも自分のキャリアに責任を持つ。その積み重ねが、キャリアオーナーシップの実践そのものです。人は一人では生きていけません。コミュニケーションを意識的に行うことで、新しいつながり、考え方に触れる機会が増えていく。その繰り返しもまた、キャリアオーナーシップの実践です。
    変化の激しい時代だからこそ、
    「何をしたいのか」「どうありたいのか」を語れる人が最も強い。
    もし今、キャリアについて迷いや不安を感じているなら、一人で抱え込まず、ぜひ専門家に相談してみてください。きっと新しい視点や気づきが得られるはずです。

    今日、この瞬間から人生のハンドルを自分の手に――その一歩が、未来を大きく動かします。

    個別相談はこちらから受け付けています。リンク先の下段に申し込みフォームがあります。

    酒井
    酒井 信幸
    キャリアコンサルタント/社会構想大学院大学 事務局長 兼 先端教育研究所研究員