猛暑で死者多数のメッカ巡礼 今後は人工ミストやスマートブレスレット等で対策を

(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年6月20日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

毎年、世界中から数百万人のムスリムがサウジアラビアのメッカへハッジ(Hajj、巡礼のこと)に出かける。この大移動は規模において他に類を見ないものであり、巡礼者は数多くの健康リスクに直面する。

メッカはムスリムにとって最も聖なる都市だ。そして、ハッジはイスラムの五行のひとつであり、身体的、財政的に可能であればムスリムにとって一生に一度は果たすべき宗教的義務とされている。

特に今回2024年のハッジ巡礼は災害/悲劇による暗い影を落とされた。少なくとも900人(※編集注:同国政府発表によると6月23日時点で1300人超)の巡礼者が主に熱射病と関連する合併症で亡くなったのだ。

ハッジの致命的な災害、今回が初めてではない

最も壊滅的な事故のひとつは、2015年にメッカ近郊のミナでの「ラミ・アル・ジャマラート(Rami al-Jamarat)」の儀式中に発生したものだ。この儀式では、巡礼者が悪魔を象徴する柱に石を投げるのだが、その日は過密状態に加え、大勢の巡礼者が逆方向に移動しようとし、致命的な群衆事故を引き起こした。2,400人以上の巡礼者が命を失い、これはハッジやその他の大規模集会の歴史上最も死者を出した災害の一つとなった。

別の大規模な死者を出した事件は1990年にメッカ近くの聖地へと続くアル・マアイセム歩行者用トンネルで発生した。換気不良と巡礼者の膨大な流入が組み合わさり、トンネル内で群衆事故が発生し、1,426人の巡礼者が窒息などで死亡した。

また、年を追うごとにハッジ巡礼中に他の事故も発生している。

1994年にはジャマラート橋近くでの踏みつけ事故が発生し、約270人の巡礼者が死亡した。

1998年のハッジでは、別の踏みつけ事故で118人の巡礼者が死亡した。

過去半世紀にわたり、9,000人以上が大規模な宗教集会で死亡しており、そのうち5,000人以上がサウジアラビアでのハッジ中に発生した。

インドでも、約40件の悲惨な事件で少なくとも2,200人が死亡しており、この種の悲劇のホットスポットである。

なぜハッジ(巡礼)はこんなに危険になってしまうのか?

数百万人の巡礼者が限られたエリアに集まるため、過密状態と群衆事故の可能性が高くなる。この状況は、巡礼に伴う感情の高まりや情熱によってさらに悪化する。巡礼者は、激しい献身と熱意を持って儀式を行うが、これが時に過度の疲労を引き起こすことがある。

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