「1人で100億円企業つくる時代」 チェンジHD 22歳CAIO登用で企業転換加速
「1人で100億円企業をつくる時代が来る」——。株式会社チェンジホールディングス(本社:東京都港区、代表取締役兼執行役員社長・福留大士氏)が2026年9月16日に開いた記者発表会で、福留氏はこう語った。きっかけは、この日発表したAI開発スタートアップ、株式会社アウターク(本社:東京都千代田区、代表取締役CEO・西山瑞生氏)のグループ会社化と、22歳の西山氏をチェンジHDグループのCAIO(Chief AI Officer)に据える人事だ。会見ではあわせて、独自調査によるAI活用格差の実態、自治体向けAIエージェントの実証、子会社イー・ガーディアン株式会社によるAI活用も発表された。
(左から)グループ会社化でCAIOに就任したアウターク代表取締役社長の西山瑞生氏、チェンジホールディングス代表取締役社長の福留大士氏
「1人で100億円企業」言い切った22歳
発表会でひときわ目を引いたのは、福留氏自身が明かした世代間のギャップだった。福留氏は「自分は50歳で、かれこれ30年近くビジネスをやってきたが、1人で100億円の企業をつくるのは無理だと思ってしまう」と率直に語った一方、西山氏の世代は「経理も人事も総務も、全部AIにやらせればいい」と当たり前のように言い切るのだという。この「ソロプレナー」型のビジネスモデルへの転換を、AIを使ってどう実現するかという挑戦こそが、今回のグループ化の核心だと福留氏は説明した。
西山氏は2025年に東京大学在学中にアウタークを創業し、1年足らずで30名規模の組織に育てた人物である。アウタークは製造業向けに、熟練者の勘や経験を形式知に変える「技術伝承・脱属人化」のAIを提供するスタートアップで、契約前に無償のプロトタイプとPoC(概念実証)を示す独自の進め方により、従来の4分の1程度の期間と費用でのソリューション提供を実現しているという。福留氏は起用の理由として、最新の研究動向を踏まえて社会実装を見通す力と、長い商習慣に由来する認知の偏りが少ない点を挙げた。なお株式の取得比率・取得額は非公開で、アウタークの前年度売上高は約8,700万円・黒字という。
意欲7割、実感2割のAIの溝
この日公表した「企業のAI実装格差に関する調査」(2026年8月20〜26日実施、就労者1,559名が回答)では、業務でAIを使った経験がある人の72.9%が「もっと活用したい」と答えた一方、「十分に活用できている」と感じる人は16.9%にとどまった。地域別では東京23区の29.3%に対し地方は8.2%と3.6倍の差があり、都市の規模が小さいほど活用の実感が薄れる傾向が出た。福留氏は、活用が進まない要因は個人の能力ではなく、業務プロセスやデータ整備といった組織側の基盤にあるとの見方を示した。
自治体AI実証、担い手不足に挑む
公共分野では、栃木県那須塩原市(市長・渡辺美知太郎)、奈良県三宅町(町長・森田浩司)と組み、自治体業務におけるAIエージェント活用の実証を始める。Google Cloudの導入支援を強みとするクラウドエース株式会社と共に、ツールの「導入」で終わらせず業務への「実装」まで伴走する。総務省の調査ではAI・RPAの導入率が都道府県・指定都市で100%なのに対し、その他の市区町村は58%にとどまっており、この差を埋める狙いがある。AIが担うのは調べる・まとめる・照合する・下書きするまでで、最終判断は職員が担う設計とした。
IP侵害10.4兆円、AIとヒトの砦
投稿監視を手がける子会社イー・ガーディアン株式会社(代表取締役社長・高谷康久)は2026年3月1日に「AI戦略統括部」を新設し、7月にはスーパーバイザー130名に生成AI「Claude Code」を導入、約200個の業務改善ツールが現場から生まれている。福留氏は、AIによる代替の圧力が最初に及ぶのは外部委託や派遣であり、BPO事業を担う同社もその影響を受けてきたと認めたうえで、人とAIの分業で付加価値を保つ考えを示した。象徴例として、日本発コンテンツのネット上での侵害被害が世界全体で10.4兆円規模にのぼるとし、生成AIによる無断学習でさらに拡大する被害をAIと人の分業で防ぐ考えを述べた。
人間らしさが最後の砦に
AI時代に求められる人材像を問われた福留氏は、頭脳労働の多くがAIに置き換わる中でも人と人との信頼関係から価値を生む「人間らしさ」を磨くこと、そして事業を2倍、10倍にする発想をAIとの対話から引き出せるよう自らの認知の限界を超えることの二点を挙げ、攻めの姿勢と倫理・ルールの順守を両立できる人材が必要だと結んだ。