地域と同じ目線で考え、成長の一手を作る   博報堂プロダクツ 九州支社

コロナ禍の影響で地方自治体にはDXなど取り組むべき多様な課題が噴出し、博報堂プロダクツ 九州支社では近年、自治体を支援する事業に力を入れている。同事業における、同社の強みやクリエイティブの特徴とは何なのか。板垣支社長にインタビューするとともに、北九州市といちき串木野市の事例を取材した。

自治体をワンストップで支援し
必ず結果にコミット

博報堂プロダクツはプロモーション領域の課題解決を担う総合制作事業会社だ。九州支社は約50人の社員を擁し、福岡市内に2拠点、鹿児島市内に1拠点の計3拠点を持つ。支社長の板垣氏は九州支社の強みについて、「デザイナーやコピーライター、映像プロデューサーに加え、ダイレクトマーケティングプロデュース職、データビジネスインテグレート職、データアナリストなど、結果にコミットする15の専門職が揃っています。ブランディングから制作、告知までを行うだけでなく、結果を検証して改良していく一連の流れをワンストップで担えます」と語る。

博報堂プロダクツ 九州支社長 板垣 信行氏

自治体との協業は以前よりあったが、より注力するようになったのはコロナ禍がきっかけだ。

「農産物が売れない、観光客が来ない、DXが求められるなど、地方にとって取り組むべき課題が噴出する現状を前に、我々がもっと積極的に支援に関わっていかなければならないと感じました。そこで『九州を元気にする』というミッションを掲げ、今年1月にはローカルガバメントタスクフォース(LGTF)という組織横断チームを新設しました。ここでは、先鋭化している地方の市町村の課題解決に取り組んでいます」

DXやマイナンバーカードの普及と一口に言っても、それをどう使いこなし、効果に結び付けていくかが重要だ。同社では、各自治体の実態に合った支援を行っているという。

「地方が元気にならなければ、地方の産業や文化が衰退し、ひいては日本の元気が失われます。九州支社は『成長の一手をこしらえる』というパーパスを掲げており、課題を抱える地域と同じ目線で物事を考え、例えば移住・定住者を増やす、ふるさと納税の寄付額を増やすなどの成果に、必ずコミットさせていただいています。お悩みをお持ちの自治体の方には、ぜひご相談いただきたいです」

新都市ブランドで若者の定住・移住を推進する、
北九州市の事例

北九州市は2021年7月、地方創生の取り組みを効果的に発信するための新たな都市ブランド「New U(ニューユー)」を発表した。10~30代の定住・移住促進を目的とし、ビジネスから⼦育てまで様々なことに挑戦できるまちとして、「あたらしいことを、はじめやすい都市」をスローガンに掲げる。同市クリエイティブディレクターの下川氏は「北九州市には大学が多いのですが、卒業後の20代前半から30代までの人口転出が超過しています。そのため、北九州市でなら何かできそうだと関心を持ってもらうことが大切だと考えました」と狙いを説明する。

北九州市の若者層をターゲットにした新都市ブランド「New U(ニューユー)」の交通広告。2021年11月末、東京都渋谷駅の道玄坂方面へ向かう壁面を大胆にジャックした

博報堂プロダクツの宮脇氏は、「他都市の定住・移住促進サイトと差別化するため、北九州市在住もしくは同市を拠点として活躍する若いアーティストなどの『人』を前面に出すことが、市の企画方針でした。これを具現化するため、『この土地だからこそできること』を彼らの言葉として引き出し、まちの魅力を表現しました」と言う。

加えて、市の部署ごとに発信していた定住・移住や子育て支援の情報を「New U」に集約してわかりやすくしたいという市の狙いも、ブランドサイト内で具体的な専用サイトに誘導するよう、見せ方を整理して実現した。また、同施策の各種広告展開でも表現のクオリティにこだわり、SNSなどで大きな反響を得ることができた。

施策を展開して間もないため成果についてはこれからだが、「New U」のポスターや広告を見た地元の大学生らから、「自分たちに手伝えることはないか」という問い合わせが相次いでいるという。同市の藤田氏は、「ターゲット世代にメッセージが伝わっていることを実感しています。コロナが収束したら、これまでできていなかったリアルのイベントを展開して、さらに注目度を上げていきたいです」と今年度の目標を語っている。

(左から)博報堂プロダクツ 九州支社プロデューサー 宮脇 悠氏
北九州市クリエイティブディレクター 下川 大助氏、
北九州市企画調整局地方創生推進室戦略的広報担当係長 藤田 年男氏

ふるさと納税額を2年で4倍に
増やした、いちき串木野市の事例

鹿児島県いちき串木野市はマグロの遠洋漁業基地として栄え、マグロの他、ちりめんや焼酎、ぽんかん、ハム製品などの豊かな食に恵まれてきた。こうした背景を活かし、同市は2010年に「食のまちづくり宣言」を行い、特産品による地域活性に取り組んでいる。

いちき串木野市は「ふるさとチョイスAWARD2017」で優秀賞受賞。同市潟村氏と市来農芸高校の西教諭の2人が登壇し、産学官連携で開発した「金の桜黒豚」の説明を行った

2015年にはふるさと納税事業にパートナー企業制度を取り入れ、返礼品の拡充を実施。同年度の寄附額は、目標の2千万円を大きく上回る3億6千万円に達した。当時同事業を担当していた同市の潟村氏は、「翌16年度が3億7千万円で足踏みし、さらに伸ばしていくためにポータルサイト以外の手法を導入したいと考え、博報堂プロダクツさんに委託しました」と語る。

博報堂プロダクツは、特定層にターゲットを絞ったネット広告や、過去に寄附をした人へ向けたメルマガ送信などのWebプロモーションを実施。ポータルサイトのバナーも、よりメッセージ性を強調できる素材に入れ替え、イベントでは目立つブースの設えを提案するなど、トータルな支援を行った。その結果、17年度には6億7千万円、18年度には16億9千8百万円と、2年間で寄付額を大きく伸ばすことに成功した。同社の森氏は「財源確保だけではなく、認知度アップや地場産業活性化にも繋がるという目的意識を共有しながら、魅力的な返礼品の充実に努めた担当者様の取り組みとも相まって、伸ばすことができました」と振り返る。

その後、同市の井上氏が潟村氏からふるさと納税事業を引き継ぎ、20年度は20億600万円に到達。井上氏は「返礼品事業者の中には、生産能力を増強する設備投資を行う企業も増えています。今後はさらに返礼品のラインナップの充実を図り、産業の活性化に繋げていきたい」と話している。

(左から)博報堂プロダクツ 九州支社プロデューサー 森 昭二氏、
いちき串木野市シティセールス課ふるさと納税係 井上 康介氏

 

お問い合わせ先


株式会社博報堂プロダクツ 九州支社
TEL:092-283-5390
担当:渡辺 武・山田直樹・宮脇
https://products-kyushu.com/
※九州支社WEBサイトのお問い合わせページにお願いいたします。

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