SBプレイヤーズ「たねまき」 魅力ある農業で地域を活性化

ソフトバンクグループのSB プレイヤーズは子会社を設立し、常総市の「アグリサイエンスバレー構想」で、農業を通じた持続可能なまちづくりに取り組む。今後10年で、全国の10拠点に同様の取り組みを広げていく方針だ。

ソフトバンクグループのSB プレイヤーズは現在、行政と共に地域と共創する5つの事業を展開している。「私たちは地域の皆様と一緒に、地域にどのような貢献ができるかを考えながら事業を推進しています。情報技術(IT)で地域社会に活力を生み出し、地域の雇用創出や維持、持続可能なまちづくりを実現することが理念です」。SBプレイヤーズ取締役社長室室長の高松俊和氏は、こう語る。

高松 俊和 SBプレイヤーズ 取締役 社長室室長

5つの事業には、インターネットで公営競技の投票券を販売する「オッズ・パーク」、ふるさと納税ポータルサイトの「さとふる」、旅行会社の「たびりずむ」、そして農業事業の「たねまき」と「たねまき常総」がある。

「SBプレイヤーズの事業分野は仕事や遊び、地域での暮らしと多岐にわたります。地域における課題に対し、各地域の特色を活かした事業を生み出し、推進します」。

これらの事業のうち、2019年4月に設立された、たねまきは「日本の農業に、新しいたねをまく」を経営理念としている。茨城県常総市が進める「アグリサイエンスバレー構想」での活動に向けて創業し、同時に、現地で農業を行う新会社、たねまき常総も誕生した。

たねまき常総では、2022 年4月に規模を拡大し栽培を開始する予定となっている
(画像は規模拡大時のイメージ図)

常総市はアグリサイエンスバレー構想で、圏央道(首都圏中央連絡自動車道)常総インターチェンジ周辺の45へクタールの土地を開発。「食と農と健康の産業団地」をコンセプトに、農業を活かしたまちづくりを進めている。

「私たちはアグリサイエンスバレー構想で、農業生産や雇用という、まちづくりを形作る部分を担当しています。これまでは、インターネットを通じた事業で地域の皆様のお手伝いをしてきましたが、今後はさらに、地域で実際にまちづくりに関わっていきたいと思っています」。

年間の作業量を平準化し
農業で安定的な雇用を創出

SB プレイヤーズはこれまでも様々な事業で地域と関わってきたが、特に日本の地域における1つの大きな課題として、農業があることを認識してきた。とりわけ、農業従事者の減少という問題が近年、深刻化している。その背景には、農業従事者の高齢化や耕作放棄地の拡大、過酷な労働環境、大規模な天災、海外輸入による食料自給率の低下といった様々な事情がある。

「農業従事者の減少は、地域で働く人々の減少や地域の人口流出にもつながっています。この課題に取り組むためには、働きやすい農業の新しい形を模索しなければならないと考えています」。

現在の農業における作業量は、土壌づくりの時期には少なく、収穫時期には一時的に増える傾向がある。「作業量における繁閑の差が激しいことは、一番の課題だと感じています。これによって安定的な雇用の維持が難しく、短期雇用に頼り、兼業も必要になります。そこで私たちは、年間の作業量を安定的に平準化できれば、長期的な正規雇用や安定雇用を実現できると考えました」。

ソフトバンクグループではこれまでインターネットを使った様々な事業を展開しており、たねまきの農業事業にも最新のITを積極的に取り入れていく。しかし、事業の目標は最新技術を駆使した農業ではなく、あくまで地域で働く人々が輝ける環境を生み出すことだ。

「最新技術はサポートのために使いますが、技術に頼り切るのではなく、地域の方々と一緒に安定して働きやすい環境づくりや、雇用維持のような課題に取り組みます。そのために大事なのは、効率的・安定的に生産し、通年で出荷販売していくことだと考えています。その結果として、安定的な雇用の環境が整うはずです」。

たねまき常総では、2019年12月にミニトマトの栽培を開始し、順調に収穫や出荷を行っている。施設では環境制御装置を活用し、温度や二酸化炭素(CO2)濃度などをコントロール、量・質ともに安定的な出荷を実現している。また、高軒高ハウスと換気システムの導入によって「夏越し栽培」を行い、通年での出荷を可能にしている。

一方、システム開発では、労務・作業管理システムによる生産性向上や、誰でも簡単に作業・管理ができる体制の構築を目指している。さらに、ロボット開発も進めており、収穫ロボットによる作業で生産性の向上を図っていく。これらを通じて、たねまきが目指すのは、多様性のある労働環境と魅力ある農業環境を作ることだ。

「農業に新しい技術や概念を取り入れ、地域の若い人たちがロボットや通信技術、新しい生産管理や経営管理の概念に触れられるようにします。それによって若い人たちが農業に興味を持ち、地域で働くという選択肢を取っていただけるように取り組んでいます」。

魅力ある農業環境では、働きやすい環境を指している。例えば、栽培の作業を手助けする機械を導入し、高齢者や力の弱い人たちも農業に関われるようにする。「若い人だけでなく、年配の方々も長く働ける環境を用意したいと考えています。それによって、新規就農や新しく地域に来ていただける方が増え、移住・定住による人口増加にもつなげていきたいです」。

今後10年で全国10拠点への
拡大を目指す

常総市におけるこれまでの取り組みは、実証としての小規模なものだったが、2022年4月までに規模を拡大する計画だ。現在は1へクタールの敷地を7へクタールに広げ、日本最大級のミニトマト生産拠点にしていく。これが実現すれば、現在は10名程度の雇用を100~150名まで増やし、地域の人々を採用していける見込みだという。さらに今後10年で、同様の取り組みを全国の10拠点に拡大する方針だ。この目標に向けて、現在、全国の農地や自治体のまちづくり計画に関する調査を進めている。

「SB プレイヤーズの事業の軸は、地域の皆様との共創で事業を展開していくことです。移住・定住を増やし、魅力的なまちづくりをするには、民間と公共団体、地域の方々が一緒に考えていくことが重要です。私たちは、その一端を担わせていただきたいと思っています」。

 

お問い合わせ


SBプレイヤーズ株式会社 農業事業担当
MAIL:info_tanemaki@tanemaki.co.jp

この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。