スマートシティ「くれ」へ、マクニカと連携 新原芳明呉市長に聞く

広島県呉市は、「質の高い生活が実現されるスマートシティ『くれ』」を目指し、呉駅周辺地域総合開発事業などのプロジェクトを推進しており、2023年3月にはマクニカと包括連携協定を結んだ。新原芳明市長に、スマートシティ構想や具体的な取り組みを聞いた。

新原 芳明 呉市長

あらゆる市民がICTの
メリットを享受できる環境を

── 呉市が目指すスマートシティの姿や、具体的な取り組みを教えてください。

呉市は第5次呉市長期総合計画(2021~2030年度)において、目指す都市像として「誰もが住み続けたい、行ってみたい、人を惹きつけるまち『くれ』」を掲げ、5つの具体的な姿を描きましたが、そのひとつが「質の高い生活が実現されるスマートシティ『くれ』」です。

市内全域に張り巡らされた高速通信網を基盤として、先端技術を活用した新たな交通サービスや都市データプラットフォームなどでスマート化されたまちが、コンパクトシティとネットワークの核である呉駅周辺から全市域に拡がる形で、Society5.0 が実現していること。そして、そこから生まれる人と人との出会いや交流、集まる情報などから、様々な分野でイノベーションが起こり、ライフスタイルが大きく変化するなど、全国の地方都市のモデルとなり、新しい時代にふさわしい質の高い生活を楽しんでいることなどの未来像を描いています。

スマートシティの実現に向けて、すでに様々な取り組みを始めており、そのひとつが「スマートチャレンジくれ」です。呉市の地域課題(=ニーズ)の解決に向けて、企業から先端技術(=シーズ)の提案を募集、意見交換やワーキングで課題の深掘りを行いながら、実証実験や実装を目指すものです。全国から約300件の応募があり、15テーマを選定して取り組みを始めています。スマートフォン等を利用した情報発信や電子回覧による自治会の負担軽減につなげる取り組みや、コミュニケーションロボットを活用した高齢者の見守り支援などを、スタートアップ企業等と連携しながら実証を行っています。

また、2021年度には市内のほぼ全域に光通信回線の整備が完了し、これまで高速インターネットが使えなかった山間部や島嶼部、一部の学校などでもICTを身近に使える環境が整いました。このメリットを実感していただく取り組みとして、安芸灘4島にはコンビニが一つもないのですが、島内のどこかに公共手続きや民間サービスが利用できるようなマルチメディア端末を置くことができないか、事業者と交渉中です。

このように、私はスマートシティは特別なものではなくて、毎日の生活とイコールだと思っています。華々しいプロジェクトを立ち上げるのではなく、地べたを這いながら少しずつ前に進み、皆がICTのメリットを享受できる環境をつくろう、そんな考え方でスマートシティを推進しています。

呉駅前を官民連携で再開発

駅周辺地域総合開発(第1期)のイメージ。スマーシティと交通まちづくりの起点形成を目指す
出典:くれみらい「呉駅周辺地域総合開発(第1期)整備計画書」

── 呉市が推進するスマートシティ・コンパクトシティ構想において重要な役割を担うJR呉駅前では、官民連携による再開発が進んでいます。

呉駅前は百貨店のそごうが2013年に閉店しましたが、この跡地と駅周辺を一体で再開発する「呉駅周辺地域総合開発」を推進しています。第1期開発では、呉駅周辺地域全体を総合交通拠点として捉え、駅前広場を、1階は交通ターミナル、2階はデッキ広場、更にそごう跡地に整備する複合施設の一部を含め、国土交通省のバスタプロジェクトの一環として再整備していただき、そごう跡地に民間主体で整備する複合施設とともに、市全体の交通まちづくり及びスマートシティの起点となる、次世代モビリティにも対応した機能整備を進めます。そごう跡地に整備する、生活に必要な都市機能等を備えた複合施設は 「くれみらい」(代表者:五洋建設、構成員:マクニカ等)を実施事業者に選定しました。

呉市は戦前・戦中に戦艦大和などの艦艇を造り上げるなど、世界最高水準の技術と人が集まるまちとして日本の近代化に深く関わってきました。まちの歴史や物語をより広く認識して頂くための大和ミュージアムのリニューアルにも注力しています。また、多くの方々に呉市に来ていただきたいと存じますが、呉に来られた人が呉駅に降り立った時の第一印象が大事です。駅であらゆる情報が手に入る、バスタから簡単に文化・観光施設等にアクセスできる、呉市ならではのスマートな生活を実感できる。そんな夢の駅前づくりを、マクニカが助けてくれれば嬉しいですね。

複合施設には建物OSを導入し、交通や人流の情報を一元化してデジタルサイネージで案内したり、建物のエネルギー使用状況の見える化に取り組む方針ですが、これは将来的に都市OSの構築にも繋がると思います。呉市はエクスポリスと連携して「データプラットフォームくれ」を公開しており、市が保有するさまざまな動的(リアルタイム)データを提供したいと考えています。スタートアップ企業などがデータを活用したり、市内で起業してくれることを期待していますが、これらのデータが都市OSと接続されれば、新たなサービスの開発にも繫がると思います。都市OSの構築に向けては、情報管理の在り方や事業主体を誰が担うかなど様々な検討課題がありますが、関係者みんなで知恵を出し合いながら、取り組むべきだと認識しています。

マクニカと包括連携協定

── 2023年3月、呉市はマクニカと包括連携に関する協定を締結しました。技術商社・マクニカへの期待を教えてください。

マクニカからの連携協定の提案はとてもありがたいことでした。具体的な連携・協力事項として、次世代を担う若者のチャレンジ支援、先進先端技術を基にしたものづくり産業等の振興、先進先端技術を活用したコンパクトシティの形成という3つを挙げています。

私の感覚ですが、マクニカは“柔軟”な企業だと感じます。様々なニーズに対応し、先端技術を目利きして最適なソリューションとして仕上げ、価値提供できる企業だという印象です。私が企業パートナーに求める姿勢は、製品を売りつけるのではなく、地域の課題や実現したいことを一緒に考えて提案してくれること。マクニカはそれを一緒にできる企業ではないかと期待しています。

 

お問い合わせ先


株式会社マクニカ
スマートシティ&モビリティ事業部
メール:auto-solution@macnica.co.jp
URL:https://www.macnica.co.jp/business/maas/

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