2050年の自分に贈る「着るロボット」 若手の挑戦が築く万博のレガシー

(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2025年10月8日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

着るロボット

2025年大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオン。VRゴーグルをつけた体験者が翼をはためかせるように腕を動かすと、画面の向こうの自身のアバター(バーチャル上の3Dキャラクター)が空を飛びました。このコンテンツは、機械メーカーの株式会社椿本チエイン(本社:大阪市)が出展した「T’s Exoskeleton(エクソスケルトン)」―カラダ拡張スーツです。来場者はVRコントローラーを握って「飛ぶ」「持ち上げる」といった動作を体験すると、自分にぴったりの「着るロボット」を提案してくれます。この展示には、「あなたのスーツはこちらです。2050年に取りに来てね」という未来の自分に向けたメッセージが込められています。

「T’s Exoskeleton(エクソスケルトン)」―カラダ拡張スーツ
腕を上下に動かすと上昇し、下げると下降、伸ばすと滑空できます。

「動かす」を支える業界トップ企業の若手が立ち上がった!

椿本チエインは、1917年の創業以来、チェーンなど機械部品から搬送システムまで幅広い「動かす技術」に強みを持つ機械メーカー。なかでも、産業用チェーン、自動車エンジン用チェーンでは世界シェアナンバーワンを誇っています。

このプロジェクトは、社内の各事業部門から選出された若手社員による「万博実行委員会」によって進められました。まずは社内で企画アイデア募集を実施、その結果を元に、メンバーが集まりアイデアを出し合ったところ、「空を飛んでみたい!」という声が多くあがりました。そこで、「どうすれば“飛ぶ感覚”をリアルに体験できるか?」をみんなで考えました。

プカプカ浮かぶ、空中でスピーディに移動するなど、「空を飛ぶ」のイメージがバラバラでしたが、企業理念のキーワード「動く・動かす」技術で、ココロもカラダも動かすことにこだわりたいと、自ら腕を翼にして空を飛ぶスタイルに決まりました。空を飛ぶ体験にはVRの活用が必要だとなりましたが、VR一辺倒にはしたくない、というのが全員一致の意見でした。結果、腕が翼となって飛ぶ動作を、両手でコントローラーを握って操ることで、まるで自分が空を舞っているような体験ができました。両手を広げ体を傾けると滑空することもできます。VR越しには広がる大空で没入感たっぷりです。

体験データと完成したスーツ
体験データと完成したスーツは、おみやげとして配られるキューブ(右)に記載している二次元バーコードにアクセスすると見られます

カラダを強くする「着るロボット」

未来の着るロボット「T’s Exoskeleton」は、空を飛ぶだけでなく、重量物も瞬時に持ち上げることもできます。ロボットを着ることによって、身体能力を増強・拡張できる世界が2050年には実現しているかもしれません。それは年齢や体の状態に関係なく、やりたいことに挑戦できる未来です。

そのようなコンセプトだからこそ、老若男女、障がいの有無にかかわらず楽しめるようにと操作性には気を配りました。実際に、腕が動かしにくい来場者がスタッフのサポートを受けながら体験を楽しんだ例もあります。VRコンテンツは何度も作り直され、より直感的で楽しい体験になるよう工夫を重ねました。プロジェクトメンバーの石坂さんは「違う部門の仲間と未知の分野にチャレンジする中で、会社をより深く知ることにもつながりました。以前所属していた営業では完成した商品をまずは知ってもらうことが目的でしたが、万博ではチャレンジする会社の姿勢そのものをPRできました。いつものビジネス展示会では得られない貴重な経験です」と語ります。

プロトタイプ検証
プロトタイプ検証は何度も繰り返しました

「新しい技術で未来をつくる」を万博のレガシーに

同社では、持続的成長に向け、新事業創出が大きな課題となっています。アグリビジネスでは、9月に次世代モデルの人工光型植物工場「福井美浜工場」が完成。その他、電動アシストスーツやエンジンドローンなどの次世代の新事業にも積極的に取り組んでいます。今回の展示は、そうした企業の姿勢を広く伝えるための場でもありました。VRという新しい技術は、「体験のおもしろさ」と「未来の可視化」にぴったり。すでに同社では、AR(拡張現実)やMR(複合現実)を活用した同社のマテリアルハンドリング部門(運搬・管理を効率化する事業)への応用も始まっており、技術革新への挑戦は連綿と続いています。

同社の展示ブースは、「こんな未来をつくりたい」という思いを、技術と体験を通じて形にしたものです。新しいアイデアを練り、VRなどの先端技術を活用して、2050年の社会をどう変えていけるかを来場者に伝える場となっています。

こうした挑戦の積み重ねは、企業の中に「未来をつくる力」として息づき、その姿勢が、万博のレガシーとして同社に受け継がれていくことでしょう。

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近畿経済産業局 公式note