自治体EBPMの最前線 政策立案へデータを活用

自治体が政策を決定するうえで推進されているEBPM(事実に基づく政策立案)。その元となるデータ整備が国を挙げて進むなか、Tableauは直感的な操作感のクラウドツールと利用者コミュニティの整備により、自治体の利用を広げている。

上原 政則 セールスフォース・ドットコム
Tableau Account Executive

コロナ禍や物価の高騰などを背景に、過去最大規模での成立した2022年度一般会計予算。政府は、こうした予算や政策などの効果測定、また政策の有効性そのものを高めることを目的に、統計データなどを活用したEBPM(Evidence Based Policy Making、事実に基づく政策立案)を推進している。

データに基づく政策決定が常識に

2016年12月に国や地方公共団体に対してオープンデータの推進を義務付ける「官民データ活用推進基本法」が施行されたことを契機に、2021年度に内閣官房、総務省、デジタル庁などから発足した「EBPM推進委員会」 では、「予算編成において当たり前のようにEBPMが溶け込んでいく」ことを目指すとして、行政の持つデータのオープンデータ化や活用のためのガイドラインの策定が進んでいる。

こうした状況において、企業や組織が持つデータを分析、可視化するBI(ビジネスインテリジェンス)プラットフォームを提供するTableauのアカウント エグゼクティブである上原政則氏は、EBPMのこれまでと今後の広がりについてこう語る。

「これまで地方自治体は様々な政策決定をしてきましたが、それは経験と勘にもとづいて行われてきた面があります。昨今のコロナ禍において、自治体には変化への対応と新たな政策が求められていますが、今後はデータなどのエビデンスの重要性がますます問われるでしょう。本来、行政が持つデータを活用すれば、客観的な事実にもとづく政策決定ができるはずです。2016年から官民データ活用が推進され始めたことで、こうしたデータが急速に整いはじめました。それを活用する『Tableau』のようなBIプラットフォームもより使いやすくなり、活用の機運は高まっています」。

専門スキル不要でデータを可視化

Tableauを活用してデータ分析などの業務改革を行っているのが兵庫県だ。同県では2019年4月に「ひょうご・データ利活用プラン」を策定。「産業のイノベーションの創出」や「多様で質の高い暮らし」の実現を目指し、多種多様なデータの利活用に取り組んでいる。

兵庫県は、Tableau Public上に2020年4月以降、様々なダッシュボードを公開している

中心的な役割を担っている企画県民部 科学情報局 情報企画課では、以前は大半のデータ分析を都度Excel で集計やグラフ作成をしており、迅速性や効率性に欠けていた。また、政策・統計部門では専門性を有する職員が統計解析ソフトを利用していたが、属人的でデータや成果の共有が難しいという課題を抱えていた。

そのような状況の中、他の自治体職員からTableauを紹介され、トライアルを経て導入した。前述の課題を解決しながら、Tableau Public上に2020年4月以降次々とオープンデータを可視化したダッシュボードを公開している。まず情報企画課によって「兵庫県_交通事故発生状況」、県政150周年記念事業における「県民連携事業の実施状況」、「将来人口推計ダッシュボード」が作成・公開され、健康増進課でも「兵庫健康Data ダッシュボード」が作成された。こちらは公開しただけでなく、庁内各課の職員参加によるワークショップを開催し、ダッシュボードを使ってデータ活用から政策立案の議論まで行っている

職員による自走を促すコミュニティ

Tableauの特徴は3つある。1つ目は直感的な操作感、2つ目は掘り下げ分析が行えること、3つ目はコミュニケーション基盤として活用できることだ。

まず、データをダッシュボードで可視化する過程では、様々な個別のデータを正規化、つまり欠損データを補い、整理するなどの前処理(クレンジング)という作業が必要になるが、Tableauではこうした作業を直感的な操作感で行うことができる。また、データを地図上に載せることも容易で、市区町村名や緯度経度のデータがあれば、簡単にデータを地図上で色塗りしたりプロットしたりすることが可能だ。

Tableau のダッシュボードは、データの全体像の把握が容易な上、ドリルダウンで掘り下げながら分析を進めていくことも、直感的に行える。そのため、探索的なデータ分析によって、これまでわからなかった新たな知見を得ることができる。

さらに、庁内外へのデータやダッシュボードの共有機能が優れており、 共有権限を細かく設定することで、庁内外の関係者に情報の共有が可能だ。ダッシュボードを共有することで、同じデータを見ながら会話を深めることができ、関係者がエビデンスに基づき課題感を共有でき、適切な政策立案につなげられる。

「これまでデータ分析には専門スキルが必要でしたが、Tableauは各課の担当者が自身でダッシュボードを作成し、分析・深堀ができ、政策立案につなげられる『セルフサービスBI』にこだわって作りこんでおり、使いやすさを追求しています」と上原氏はいう。

BI製品を自治体が導入する際、「自分たちで使いこなせるか」という不安もあるだろう。その際はTableau Blueprintというデータを活用するためのガイドラインがWebで一般公開されているため、組織としてのデータ活用戦略の立て方や、幹部職員から部下への重要性の伝え方、担当者の育成方法など、様々な内容を予習することができる。

また、Tableauでは同じミッションに取り組む仲間のコミュニティ醸成にも注力している。活用事例紹介やTipsについて学ぶことができるJapan Tableau User Group(JTUG)では、メンバー同士の活発なサポートで問題を解決し、データスキルをレベルアップすることが可能だ。

そのほか、導入した自治体内部でのコミュニティづくりも促している。職員同士の交流があることで率先して取り組む中核人材が育成できるほか、人事異動で担当者が変わっても自走・継続できるため有効だという。

「自治体の規模や特定の課に限定せず、あらゆる自治体職員がEBPMに触れることで業務効率化や事実に基づく政策立案が可能になります。ぜひお気軽にご相談を」と上原氏は話した。

限られた財源や人員で努力している自治体こそ、活用を検討してはいかがだろうか。

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株式会社セールスフォース・ジャパン Tableau
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