ゼネコン対決鹿島vs清水 宇宙から脱炭素まで技術研究を加速

ゼネコンは、土木・建設を通じて、街や社会、暮らしのデザインに深く関わり、地球環境に対する大きな責任も負う。日本を代表するゼネコンは今、どのような未来を思い描くのか。大手2社、鹿島建設と清水建設の方向性を探る。

フロンティアを拡大し続けるゼネコン2社

ゼネコンは、土木・建設を通じて、街や社会、暮らしのデザインに深く関わり、地球環境に対する大きな責任も負う。日本を代表する大手2社、鹿島建設と清水建設は今、どのような未来を思い描くのか。

鹿島建設の歴史は、1840(天保11)年、鹿島岩吉が現在の東京・京橋付近に構えた「大岩」に始まる。大名屋敷の普請を請け負っていたが、開国後は洋風建築を手がけ、1880年には「鹿島組」として鉄道請負に進出、全国で鉄道や発電所等のインフラを建設し、大正期には総合建設業者に成長した。昭和の高度経済成長期以降も、日本初の超高層ビル「霞ヶ関ビル」をはじめとする大型プロジェクト、交通インフラやダム建設などを次々と手がけた同社の歴史は、まさに日本の歩みとともにある。現在、グループの手がける事業は、土木・建設から、不動産、インフラ運営、商業施設運営、環境関連事業など、きわめて多岐にわたる。

2024年4月を最終年度とする中期経営計画では、中核事業の強化、新たな価値創出、経営基盤整備を3本柱に、複数の大型工事受注、大規模洋上風力など需要拡大領域での競争力強化、自動化施工など新技術開発の加速による生産性向上・業務効率化を推進している。本年度、秋田県の「成瀬ダム」では、自動化施工技術「A4CSEL」(クワッドアクセル)の適用によって、コンクリートの月間打設量において国内最高記録も打ち立てた。また、将来、月や火星で人類が活動する時代に向けて、京都大学と共同で、グラス型の施設を回転させて地球重力を再現するといった新たなテクノロジーの研究も開始している。

一方、清水建設の創業は、初代清水喜助が、神田鍛冶町で大工業を開業した1804(文化元)年にまで遡る。二代清水喜助は和洋折衷様式を確立し、1868年には、日本の本格的ホテル第一号「築地ホテル館」を竣工。1887年には渋沢栄一を相談役に迎え、民間建築を主軸とする土木・建設請負業の基礎を築いた。第二次大戦後は、ル・コルビジェ設計の「国立西洋美術館」、吊り屋根構造の「国立競技場主体育館」など、昭和を象徴する数々の建築に携わっている。

現在、2019年度策定の中期経営計画「SHIMZ VISION 2030」のもとで、建設事業の枠を超えて多様なパートナーと共創する「スマート イノベーション カンパニー」を目指す。木質バイオマス炭を混入してCO2を固定するコンクリート、既存コンクリート構造物に塗布して大気中のCO2を吸収する含浸剤など、カーボンニュートラル関連技術の開発にも積極的だ。一方で、月面で太陽光発電を行い、地球の受電施設へ伝送する「LUNA RING」、深海に巨大な球体の未来都市を築き、海のポテンシャルを活用する 「OCEAN SPIRAL」など、壮大なスケールの未来構想の実現に向けた歩みも進める。

地上の課題を解決するノウハウを海へ。地球の課題を解決するアイデアを宇宙へ。ゼネコンが開拓してきたフロンティアは、今後も拡大し続ける。

両社の概要

鹿島建設

設立 1840年創業(鹿島岩吉により創業)
本社 東京都港区
代表 天野 裕正(代表取締役社長)
資本金 814億円
従業員数 連結:19, 396名
主な
事業内容と
グループ会社
●土木事業:鹿島建設(土木工事受注・施工等)
●建築事業:鹿島建設(建築工事受注・施工等)
●開発事業等:鹿島建設(不動産開発全般他)
●国内関係会社:大興物産(建設資機材販売)、
鹿島メカトロエンジニアリング(建設用機械納入)、
鹿島道路他(専門工事請負)、イートンリアルエステート
(不動産売買・賃貸)、鹿島東京開発(ビル賃貸・ホテル経営) 他
●海外関係会社:カジマ ユーエスエー インコーポレーテッド
(北米)、カジマ ヨーロッパ リミテッド(欧州)他 
*子会社188社、関連会社108社

出典:ホームページ(会社概要)、有価証券報告書

 

清水建設

設立 1804年創業(清水喜助が大工業開業)
本社 東京都中央区
代表 井上 和幸(代表取締役社長)
資本金 743億円
従業員数 連結:19, 869名
主な
事業内容と
グループ会社
●建設事業:日本道路、日本ファブテック、第一設備工業、
 シミズ・ビルライフケア等
●開発事業:清水総合開発等
●その他事業:ミルックス(建設資機材の販売・リース)、
  エスシー・マシーナリ(建設機械レンタル)、
シミズ・ファイナンス等(関係会社等への資金貸付)、
多摩医療PFⅠ(公共施設等の建設・維持管理・運営等のPFI事業)、
シミズ・アメリカ(北米でのグループ事業統括)
*海外グループ会社:米国8社、中国1社、シンガポール2社

出典:ホームページ(会社概要)、有価証券報告書

 

沿革

鹿島建設

1974~
1978年
新宿住友ビル、国際通信センタービル、新宿三井
ビルディング完成(1974)、サンシャイン60完成(1978)
1840年 鹿島岩吉により創業
1860年 横浜に英一番館、アメリカ一番館を建築
1932年 上野駅本屋完成
1949年 建設業界初の研究所「鹿島建設技術研究所」設立
1957年 日本初の原子炉 日本原子力研究所第一号原子炉 完成
1968年 日本初の超高層ビル「霞ヶ関ビルディング」完成(1968)
1988年 青函トンネル完成、瀬戸大橋開通
1997~
1999年
宮ヶ瀬ダム完成、東京湾アクアライン貫通、
明石海峡大橋開通
2008年 東京メトロ副都心線開通
2012年 首都高速中央環状線 新宿線山手トンネル完成
2016~
2020年
東京ガーデンテラス紀尾井町、GINZA SIX、
東京ミッドタウン日比谷完成、
HANEDAI NNOVATION CITY開業

出典:ホームページ(沿革)

 

清水建設

1804年 初代清水喜助、大工業開業
1838年 江戸城西丸造営に参加
1868年 日本の本格的ホテル第1号「築地ホテル館」竣工
1915~
1923年
中国・大連、小樽、金沢、神戸、広島、仙台、
高松に出張所開設
1959年 日本原電東海発電所建設受注、「国立西洋美術館」竣工
1964年 「国立屋内総合競技場主体育館」竣工
1974年 シンガポールに営業所開設
1987年 宇宙開発室新設、1989年「宇宙ホテル構想」発表
1999年 日本初のPFI事業(東京都水道局金町浄水場)受注
2002年 世界初のコンクリート資源循環システム開発
2008年 海洋未来都市構想「GREEN FLOAT」発表
2017年 次世代型生産システム「シミズ・スマート・サイト」開発
2023年 海外建設の事業責任を担うグローバル事業本部設立

出典:ホームページ(History)、有価証券報告書

 

業績

鹿島建設

出典:決算説明会資料

 

清水建設

出典:企業情報(財務ハイライト)

 

成長に向けた戦略

鹿島建設

出典:ホームページ(経営方針)

 

清水建設

出典:有価証券報告書

 

土木・建設の新技術

鹿島建設

出典:有価証券報告書、統合報告書2022

 

清水建設

出典:有価証券報告書

 

地球の課題解決に向けて

鹿島建設

出典:プレスリリース2022/7/5

 

清水建設

出典:ホームページ(シミズ・ドリーム)

 

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