愛媛県鬼北町長が語る 町の賑わい創出につながるDXを

2021年11月、鬼北町とドコモ、伊予銀行、いよぎん地域経済研究センター(IRC)の4者は行政・暮らし・産業のテーマにおいて鬼北町のDX 推進のための連携協定を締結した。人口減少や高齢化などの課題に対する官民共創の戦略について、町長に話を聞いた。

兵頭 誠亀 愛媛県鬼北町 町長

――今回の連携協定締結の目的とそれぞれの役割についてお教えください。

兵頭 鬼北町役場、伊予銀行様、IRC様、ドコモ様の4者がそれぞれ保有する知的・人的資源を活用し、町のDXの推進、ならびに地域活力を高めることが目的です。鬼北町は愛媛県南予地域にある人口約9000人の町で、町の高齢化率は46%と愛媛県の中でも高いです。危機感をひしひしと感じたのは、第二次総合戦略を策定するにあたり、2027年時点の人口推計を第一次戦略に比べ下方修正した時です。

こうした状況のなか、町のにぎわいの創出とDXを、スピード感をもって推進していくためには、行政だけではなく外部の力を借りることが重要でした。 役割分担としては、鬼北町がDX推進計画の策定と推進、デジタル人材の配置を行います。ドコモ様には、全国でのDXの実績と通信の知見を活かして計画の策定・推進やデジタル人材の育成などを支援していただいています。伊予銀行様には、強力なネットワークを活かした地場企業やエリア外のパートナー企業の発掘・紹介をお願いしており、IRC様には地域のつなぎ役として地場企業や地域住民との連携と、事業全体のアドバイスをいただいています。

――町としての現在の課題は何でしょうか。

大きく分けて3つあります。1つ目は人口減少による地域の高校やJR路線の存続に関する問題。2つ目はデジタルをどう活用すべきか、これには役場側の知見や意識のアップデートが必要不可欠となります。3つ目は中心エリアの活性化です。交通や教育のインフラがなくなると更に人口減少が進み、交通弱者、鳥獣害、耕作放棄地などの増加が懸念されます。

特に高校の存続は町にとっても重要で、何としても持続させるべく、さまざまな施策を講じているところです。デジタルの活用に関しては、住民向けのサービスをデジタル化することも重要ですが、一方で高齢化が進む鬼北町でデジタル・デバイドをどう防ぐかについても両輪で対策していく必要があります。中心エリアの活性化については、行政だけでなく町の事業者や学生、住民の方々の参画が非常に重要なため、意見交換をする場づくりを整えているところです。

――そうした課題に対してどのように取組んでいるのでしょうか。

取組みの3本柱を設定しています。まず行政のDX。これは民間人の視点による鬼北町版デジタル総合戦略の策定とその推進を図るもので、具体的にはNTTドコモ様の知見をいただきながら、新たな発想で計画を立てていきます。またDXを推進するのはあくまで職員ですので、そのための職員研修を行っていきます。

3つの取組の柱

鬼北町におけるDXの取組の3本柱。愛媛県のデジタル総合戦略と連動している

次に暮らしのDX。高齢化率の高い鬼北町ではデジタル化を急速に進めることは難しいですが、ドコモ様に住民向けスマートフォン講習などを実施していただきつつ、高齢者にやさしいまちづくりを進めます。新型コロナウイルス感染症の次の波に備えて、感染疑いの住民がオンラインで相談できるような窓口を実践しているほか、今後はスマートフォンなどを起点にした健康や安全の見守りネットワークの検討などが挙がっています。

最後に産業のDX。こちらは伊予銀行グループの持つ人材・企業のネットワークを活用し、JR近永駅周辺の賑わい創出を進めます。2021年度に行った住民アンケートでは、将来(10年後)に残したいものとして、自然・JR予土線(近永駅)・住民の交流の場という3つが挙がったほか、50代までの方の約半数から、自分の経験をまちづくりに活かしたいという回答が得られました。そこで町では近永地区の事業者・住民の方々とミーティングを重ね、賑わいイベントの開催や新設したコワーキングスペースの利用促進、また北宇和高校での公営塾の創設による高校の魅力化に取組んでいます。

近永地区のミーティングでは、事業者・住民・高校生など様々な立場から意見が交わされている

――若者がチャレンジできる環境づくりについてお話しください。

鬼北町にはドローンによる航空撮影やレーザー測量を行うベンチャー企業があります。代表の方とは観光や防災などの観点でこんなことができたら、というお話をよくします。他にも移住者の方でいちご農家を営んでいる方なども、事業の経験・今後の構想を積極的に語っていただける方です。町ではこうした方々に、北宇和高校の公営塾で講師としてお話いただく機会を持ってもらおうとしています。高校生には生きていく上での学びを提供し、事業者には町の活性化に参画いただきたいと思っております

中心街にある北宇和高等学校の公営塾では、様々なゲスト講師が高校生に対して指導を行う

――今回民間企業との連携による変化と今後の注力事項をお教えください。

3つあります。1つ目はスピード感。計画策定や実際の施策が活発になったと感じます。住民向けサービスが実装されれば行政サービスのスピードも早まり、住民満足度の向上にもつながります。2つ目はチャレンジ精神。行政の視点では一歩踏み出せないようなDXの取組みに、ドコモ様や伊予銀行グループ様が率先して取組んでくれるため、町としてもチャレンジする空気ができています。最後に、冷静な視点。特にIRC様には政策を判断する際に、地域の将来を踏まえた意見を言っていただき、大変参考になっています。これらの点は行政だけでは解決できない点で、官民共創の大きなメリットです。

今後は中長期で三本柱のDXに取組んでいきますが、まずは行政のDXにおける鬼北町版デジタル総合戦略を早期に策定し、職員一人ひとりがDXのプランを進める一員としてプロジェクトを進める体制を構築していきたいと思います。

 

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