時事テーマから斬る自治体経営 「ナッジ理論」の注意点

米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が提唱した行動理論である、ナッジ理論。相手の無意識に働きかけ、自然と何かの行動を起こすように導く方法だが、これを事業に活用しようとする地方自治体が増えている。自治体はナッジ理論をどのように導入し、事業効果を高めようとしているのだろうか。

地方自治体が事業を実施する際に「ナッジ(nudge)理論」を活用する傾向が強まっている。ナッジ理論により、事業効果を高めようとしている。今回はナッジの紹介と、注意すべき視点に言及する。

ナッジ理論とは

ナッジ理論に注目する自治体は多い。千葉市はナッジ理論を活用し、業務改善や課題解決を図るため、「千葉市行動デザインチーム」を発足させた。福井市はナッジ理論を市の政策に取り入れるため、20~30歳代の若手職員有志チーム「福井市ナッジ・ユニット」を結成している。千葉市や福井市のように、行政の中にナッジ理論を検討する組織(会議形態を含む)を立ち上げつつあるところもある。

筆者はナッジ理論を「住民が無意識に選択行動することによって、事業効果を高める手段」と捉えている。ナッジ理論に近い考えに「ゲーミフィケーション(gamification)」がある。ゲーミフィケーションとは「住民にゲームの要素を提供し、夢中にさせることによって、事業効果を高める手段」と定義できる(表)。

表 ナッジとゲーミフィケーション

出典:筆者作成

 

表にある定義を確認し、違いを理解できるだろうか。ナッジ理論は住民に「無意識」によい選択をさせる手法である。ゲームフィケーションはゲームの要素を取り入れ、住民が「意識的」に活動することを意図している。すなわち、両手法の違いは「無意識」か「意識」かにある。

ナッジ理論の事例

ナッジ理論は、米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が提唱した行動理論である。「nudge」は英語で「軽くひじ先でつつく、行動をそっと後押しする」ことを意味する。

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