ハルメクと旭川市の協働 アクティブシニアの移住を誘う戦略

若者や子育て世代に加え、中高齢者をターゲットに移住施策を進める北海道・旭川市。アクティブシニアに向けた事業を展開するハルメクと連携し、移住後の暮らしやコミュニティへの参画を意識できる、オリジナルな移住推進策に取り組んだ。

北海道の中央に位置する人口33万人の旭川市。5つの基幹病院と400を超える医療機関、4つの高等教育機関を有する日本最北の中核市だ。冬季を含めた就航率99%の旭川空港のあるアクセスの良い土地でもあり、旭山動物園をはじめ、旭川家具のまち、ウインタースポーツの拠点などとしても有名だ。

中高齢者は
移住のハードルが低い

2020年3月の政府の地震調査研究推進本部の発表では、全国50都市の中で今後30年以内に震度6弱以上の揺れを観測する確率が全国で唯一1%を切っており、2014年からは10社のIT系企業が、事務所やサテライトオフィス、データセンター等を、同地に新しく設置している。

一方、ハルメクは、シニア女性に向け様々なサービスを展開する東京の企業。メイン事業となる雑誌「ハルメク」は37万3000部の販売部数を有し、シニア女性には知られた存在。そんなハルメクと旭川市のコラボレーションは、旭川市が同社へ移住促進策を相談したことからスタートした。

旭川市では、移住戦略プランにおいて、若者や子育て世代に加え、中高齢者をターゲットに位置付けている。

旭川市地域振興課の印南雄太郎氏は「移住にあたって仕事や家族といった課題が少ないことが、中高齢者をターゲットに設定している理由の1つです。特にアクティブシニアは移住された後も周辺観光地や文化施設、教育関係などに高い関心を持ち、地域コミュニティにも積極的に関わる方が多いことから、地域にポジティブな循環が生まれると期待しています」と話す。

中高齢者へアプローチする上で、アクティブシニア向けの事業を数多く展開するハルメクに声をかけた。

「記事広告を掲載するだけでなく、移住の体験ツアーまで誘客できるような機能や、読者との繋がりを持っているのではないかと期待し、コンタクトを取りました」(旭川市・印南氏)。

こうした期待に対し「当初は『移住体験ツアーへハルメクの読者を送客する記事広告掲載を』といった相談でしたが、お話を伺い、まずは現状把握のリサーチを提案しました。次に雑誌を使って市の魅力を情報発信し、東京でイベントを開催。そして、最後の締めとして当社企画の移住促進体験ツアーを行うというパッケージをご提案させていただきました」と、ハルメクホールディングス 法人営業部部長の後藤昭人氏は振り返る。

後藤 昭人 ハルメクホールディングス 法人営業部部長

旭川市のイメージアップが第一

「一連の企画においては、旭川に住んでいるハルメクの読者と東京などその他地域に住んでいる読者をつなぐこと、をコンセプトにしました」(ハルメク・後藤氏)。

まず、旭川市に住む読者にアンケートを実施し、180名が回答に協力。旭川市の良い点、売りになる点を調査した。一方で東京に住む読者には旭川市のイメージ、移住に対するイメージについてアンケートを実施。そこから払拭するべきイメージと、抱いてもらうべきイメージを整理し、しっかりと把握した。

「寒い、不便といったマイナスイメージを取り除く一方で、充実した医療機関や住みやすさといったプラスイメージを持ってもらうことを目標に、雑誌での情報発信、イベント、移住体験ツアー、全てを企画設計しました」(ハルメク・後藤氏)。

東京でのイベントは、旭川市の正しい認知とイメージアップを重視し、あえて「移住」というキーワードは出さず、「旭川の四季と暮らし」と銘打って開催。雑誌のハルメクを活用した情報発信とイベント告知を行った結果、予想以上に参加者が集まったという。実際に旭川市に移住した読者のメッセージ動画を会場にて流すことで、受け手側のシニア女性へのメッセージ浸透度を高める工夫も凝らした。

「東京でのイベント前後で、旭川市のイメージをずいぶん改善できたと思います。冬はマイナス41度を記録したこともある旭川市は、寒いというイメージを持たれがちですが、それが大きく減って、『医療機関の充実』『交通網が整っている』『住みやすい』といった項目を大きく引き上げていただきました」(旭川市・印南氏)。

地元の観光事業者にもメリット

締めとして取り組んだのが移住体験ツアー「暮らすように旅する旭川4日間」。

移住体験ツアーの様子。市内在住のハルメク読者と交流しつつ、旭川市内を巡った

「暮らす、というキーワードをあえて入れています」(ハルメク・後藤氏)。

同ツアーは、通常ツアーでは巡ることがない、地元の読者が選出した旭川市の「おすすめスポットベスト10」を全て巡る設計になっている。コミュニティ形成を図るため、旭川市に住む読者とツアーに参加した読者が交流できる食事会や、地元の人々との懇親会を企画。地元読者の自宅訪問や、地元著名人との居酒屋談義なども交え、日常の旭川を体感できる工夫を取り入れた。

通常の観光ツアーは従来、旭山動物園を見学後、市外の周辺観光地を含め周遊するパターンが多いが、今回の移住体験ツアーでは4日間、市内のみを回るというオリジナルコンテンツを企画。

「不安もありましたが、結果的にはツアー参加者から非常に高い評価をいただきました。地域住民と関われる部分が大きかったですし、同じ雑誌の読者ということで、ツアー開始から打ち解けあう時間も短かったように思います。プロモーションからイメージアップを図った上で移住体験ツアーに繋げることができたのは、非常に効果的だったと感じます」(旭川市・印南氏)。

また、ツアー企画にはハルメクと一緒に地元の着地型観光旅行業者も参画。東京と地元の企業が協業してプランニングできたことも、今後に向け大きな収穫となった。

ハルメクとの事業の後、旭川市では2019年7月に官民連携で移住を促進するための「旭川移住促進協議会」を設置。ハルメクもサポート会員として参画している。

「我々としては、今回の貴重な体験とノウハウを、移住促進等の地方自治体の活性化支援に活かしていければと考えています」(ハルメク・後藤氏)。

 

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ハルメクホールディングス 法人営業部
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MAIL:halmek_koukoku@halmek.co.jp
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