統合IDの廃止を経験した英国 複数の番号での運用を模索
英国には、政府発行の単一の身分証明書(IDカード)およびそれと紐づいた市民・居住者のデータベースがない。2回の世界大戦下でそれぞれ導入されたID制度は戦後廃止されたが、その後も様々な構想があった。最近では2006年にID制度を導入したものの、2011年に廃止している。
様々な識別番号が存在
紐づけの困難に悩む
現在、英国市民と英国内の居住者(移民や留学生など)はさまざまな形式の身分証明書を持っており、その多くは政府が発行している。各政府部門には、その部門がやり取りする市民、移民、および一時的な訪問者に割り当てた独自の識別番号がある。政府内ではこれらの識別番号を連携させようという取り組みがあるが、各部門が独自の目的で異なる情報セットを収集しているので簡単ではない。
また、これまでさまざまな政府部門において、データセキュリティ上の失敗、漏洩などの多くの問題が生じている。英国で単一の国民番号制度に反対する人々は、それが生み出す2つの主要な問題を指摘している。
1つ目は「単一障害点」である。中央集権化されたシステムのセキュリティ侵害やエラーは、日本で最近発生したマイナ保険証の登録ミスのように、多数の人々に影響を与える可能性がある。IDが失われたり、個人情報が違法に共有または盗まれたりした個人に、壊滅的な打撃を与える可能性もある。
英国で最近発生したケースでは、学校の生徒に関する膨大な量のデータを収集・管理している英国教育省のデータベースから情報が漏洩した。これは、限定された目的で同データベースにアクセスすることを許可されている企業を介して、別の事業会社がアクセスできるようになっていたというもので、英国の児童生徒2800万人分の機微情報が利用可能だったという。
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