東急不動産の新たな「ヘルスケア事業」 健康寿命延伸に貢献

グループ会社とともに、様々なヘルスケア事業を手掛ける東急不動産。個人や企業に対するサービスに加え、近年拡大させているのが、自治体に向けた健康づくり支援だ。ヘルスケアアプリ「KENPOS」と自体重運動「ラクティブ」を核に、地域住民の健康づくりに貢献する。

高橋 玄 東急不動産 ウェルネス事業ユニット
ウェルネス事業本部 ヘルスケア事業部
次世代グループ 課長

健康管理と運動機会創出
ニーズに合わせた自治体支援

東急不動産が手掛けるヘルスケア事業はこれまで、グループ各社でフィットネス事業、福利厚生・健康経営支援、高齢者向け住宅などのサービスを展開し、20年以上の実績をもつ。

2020年度からは、従来、個人や企業向けに展開していたサービスを、自治体向けのヘルスケアサービスとして提供を開始した。「これまでのサービスは個人や企業向け。地域の方々の健康づくりに関する自治体のニーズの高まりを受け、当社が培ってきたサービスが貢献できるのではと考えました」と説明するのが、東急不動産の高橋玄氏だ。高齢化に伴い、地方自治体の社会保障費はひっ迫しており、地域の人々の健康寿命の延伸は、自治体の大きな課題の1つとなっている。

サービスの柱となっているのが、グループ会社のイーウェルが提供するヘルスケアアプリ「KENPOS」。歩数、体重、睡眠時間などの健康に関わる活動を記録し、行動目標の設定もできる。歩いた歩数を競うランキング表示など、利用者が楽しめるような機能が付けられる。アプリ利用や健康診断の受診、健康イベント等参加でポイントがたまり、景品等や地域内で使用できる商品券に交換できる仕組みになっている。

「健康診断結果の格納や、健診手配といった機能をウェブ化したものがKENPOSの始まり。健康データを記録し持ち歩くだけでなく、過去の健診結果をグラフで見られるなどの、幅広いサービスを提供しているところが、このアプリの特徴です」と高橋氏は紹介する。もう一つのサービスの柱が、自体重で無理なくトレーニングができる運動教室「ラクティブ」だ。運動機会の創出に加え、体の測定会、健康関連セミナーなどリアルイベントも、同時に提供できるのも東急不動産ならではの強み。「弊社グループはアプリもリアルなソリューションも持ち合わせているので、自治体のニーズに合わせてご提供することが、重要だと考えています」。

長野県富士見町では
幅広い世代がアプリを利用

2021年6月から、東急不動産は長野県富士見町の「みんなで健康223(ふじみ)プロジェクト」に参画している(ページ下、囲み参照)。

「高齢化率が30%を超えている富士見町では、健康寿命の延伸が非常に重要です。そこで少しでも早い時期から健康意識を高める必要があるとして同プロジェクトが開始されました。KENPOSを利用することで、1日の歩数の記録だけでなく、日々の行動を可視化する機能を拡充、町から健康情報やイベントのお知らせを通知することも可能です。当社が手掛ける健康イベントも案内されています」と高橋氏は話す。

富士見町で実施した健康イベントの様子

富士見町では、役場との協議を経て、KENPOS利用や健診受診、イベント参加などでKENPOS内にポイントが貯まる設計にしている。500ポイント貯まると富士見町オリジナル商品券500円分に交換できる機能も設けた。また、単なるアプリ提供だけでなく、定期的に自分の体の状況を確認するために筋力や運動機能の測定会を年4回開催し、その間は定期的な運動教室ラクティブでトレーニング機会も提供するとともに、年に1度の健康セミナーも開催している。

「以前は、町が別の歩数アプリを導入していました。健康増進のための情報発信や運動機会もセットで提供できるプログラムを展開したいというご要望を受け、当社がアプリと健康イベントを組み合せてご提案させていただきました。イベント時にアプリ登録支援も行うことで高齢者の利用も促進。継続利用者の比率が高いことも富士見町の特長です」。

健康イベントについても、2021年度はコロナ禍の中でもアイデアを出し合い、オンラインを活用したWEBラクティブやWEBウォーキングイベントを開催。2022年度は対策を講じながら定期開催ができ、会を重ねる毎に申し込み枠を超える回も増えた。定期的な開催はコミュニティ形成の一助にもなっていると高橋氏は指摘する。KENPOSには、プッシュ通知やメール配信、お知らせ掲示など、様々なメッセージ機能も付いているため、健康イベントのお知らせやポイント交換案内などを富士見町が発信。コミュニケーションツールとしても使われている。

蓄積されたデータを活用し
さらなる提案を自治体に

他にも、京都府福知山市が2022年10月からKENPOSを採用している。ポイントは地域デジタルポイントの「ふくぽ」と交換でき、福知山市内で様々な利用が可能だ。「KENPOSには二次元コード読み取り機能も付いているので、福知山市やその他の自治体でも、スタンプラリーや街歩きなどのイベントで活用されており、健康だけではなく、地域経済の活性化にもつながるのではと感じています」。

さらに、2022年12月には静岡県三島市でもKENPOSが採用開始となった。三島市はまちづくり全体に“健幸”という視点を取り入れ様々な施策を展開。新たな取組みとして「健幸づくりアプリ」の導入を目指し、デジタル田園都市国家構想推進交付金にも採択された。「三島市の例は、交付金を活用したアプリによる地域住民の健康づくりという成功事例にしたいと取組んでいます。導入開始からまだ間もないですが多くの反響をいただいており、継続的にご利用いただけるサービスになるよう、私たちも頑張らないといけません」と高橋氏はいう。さらに将来は、KENPOS利用やイベント参加の実績に基づき、健康寿命の延伸に貢献し、地域の社会保障費の抑制につながるような提案も行っていきたいと話した。

富士見町「みんなで健康223フジミプロジェクト」

富士見町の人口推計では、2年後が高齢者人口のピークとなります。高齢化は急速に進み2023年1月1日時点の高齢化率は37.33%、2045年には50%を超える見込みです。中山間地という地勢から、移動手段として自動車に依存しており、ウォーキングの習慣はあまり根付いていません。高齢化に比例して社会保障費も増加しているため、若い世代から健康意識を高め健康活動に継続的に取組み、健康な長寿世代を迎える施策が必要です。

誰もが自身のペースで手軽に取り組むことができる運動の1つがウォーキングです。町民にもっと歩いていただくため、当初はシンプルな歩数アプリを導入しました。その後、より健康に貢献することを目指して、毎日の身体状況や行動記録の見える化、健康に関する情報提供、健(検)診受診や健康イベント(筋力トレーニングなど)への参加に対するポイント付与などができるヘルスケアアプリ「KENPOS」を使うことになりました。自治体向けにアプリの改修やポイント付与方法などのカスタマイズ、健康づくりイベントの運営支援をしていただけることも「KENPOS」導入のメリットだと感じています。

今後実現したいのは、ポイントを広範に利用できるようにすることです。現在は付与した健康ポイントは富士見町オリジナル商品券に交換し、町内の店舗等で消費する地域内経済循環の一部となっています。将来的には他部署で発行している商品券を含め、ポイント付与及び交換を効率化しデジタル地域通貨として活用できるスキームを検討したいと思っています。

富士見町で進めている「みんなで健康223プロジェクト」は、ヘルスケアアプリとイベント開催、ポイント付与で町民の継続的な健康づくりを支援するスキームです。アプリの利用者を更に増やし、幅広い世代が健康習慣に継続的に取り組むことを期待します。

住民福祉課保健予防係
上原 万智子氏

 

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