実務家教員にとっての研究能力と求められる成果、発展への寄与

(55回より続く)次に、自身が創造した実践の理論を反省し、相対化することが重要である。自身の経験や暗黙知は、自身の立場や価値観に基づいているが、常に反省し、問い直すことでより洗練されたものになる。時には、他の実践の理論と衝突した場合に、双方の理論を相対化して受け入れることが求められる。実践の理論は、実務の現場で活用されることになるが、実践知の活用によって状況は常に変化する可能性を秘めている。社会や実践の状況が変われば、実践の理論も常に見直す必要がある。また、同じ領域の実践の理論であっても、異なる価値観や視点を持つ場合は、当然ながら対立することもあるだろう。そのような場合には、双方の理論を相対化し、柔軟に受け入れることが必要である。

実務家教員は、自身が創造した実践の理論を社会に広める役割も担っている。普及させるためには、コミュニケーションや教育の手法を駆使し、実践の理論の有用性や効果を周知する必要がある。また、自らが創造した実践の理論を常に反省し、改善する姿勢も大切だ。自己批判的な視点を持ちながら、より優れた実践の理論を追求し続けることで、実践の向上と社会への貢献が可能となるのだ。

実務の現場から実践の理論を構築

実務家教員にとって、研究能力は必須の要素である。しかし、研究能力を狭義に学術業績や論文の執筆に結びつけるべきではない。実務家教員の研究能力は、実務経験を反省し、実践の理論を創造し、普及させる能力であると捉えるべきだ。実務家教員は実務の現場で培った知識や経験を活かし、実践の理論を構築し、社会に貢献する存在として重要な役割を果たしているのだ。

実務家教員が実践の理論を創造し、普及させる上で重要な要素の一つは、他の実務家や教育関係者との連携である。他の実務家や教育関係者との情報交換や共同研究を通じて、より多様な視点や知識を取り入れることができる。さらに、他の実務家や教育関係者との議論や意見交換によって、実践の理論をより洗練させることができる。このようなコラボレーションは、実務家教員が持つ研究能力を向上させるだけでなく、実践の理論の質を高めるためにも不可欠である。

また、実務家教員が持つ研究能力を向上させるためには、自己の成長と学びを継続する姿勢が欠かせない。新たな知識や研究手法の習得、教育研修やセミナーへの参加、関連する文献の研究など、自己啓発に努めることが重要だ。また、他の分野や異なる専門性に触れることで、実務の理論化や応用の可能性を広げることも可能だ。

最後に、実務家教員が持つ研究能力は、単なる知識の蓄積や理論の構築にとどまらない。実務家教員は、その研究能力を実践の現場で具体的な問題解決や改善に活かすことが求められる。実践の理論を実際の現場に適用し、効果を検証することで、実務の質を向上し社会に価値を提供する。研究能力を持つ実務家教員は、理論と実践を結びつける役割を果たし、社会的な変革や発展に寄与する存在となるのである。