時事テーマから斬る自治体経営 「議員提案政策条例」の注意点

埼玉県議会が進めていた「埼玉県虐待禁止条例」の改正案が話題になった。同条例案に罰則はないが、制定・施行されると子どもを持つ世帯にとっては日常生活で多くの支障がでることになる。全国的に議論を巻き起こした結果、同条例案は撤回された。今回は議員提案政策条例の現状と注意点を紹介する。

埼玉県虐待禁止条例の改正案

埼玉県虐待禁止条例に追記される予定だった第6条の2は「児童(9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるものに限る。)を現に養護する者は、当該児童を住居その他の場所に残したまま外出することその他の放置をしてはならない」とあった。

同規定は、小学3年生以下の子どもを自宅に残したまま保護者が外出するなど放置を禁止している。委員会の答弁では、条例案が規定する「放置」の例として、子どもたちだけの自宅での留守番、子どもを車の中に置き去りにする、子どもだけ家に残してゴミ捨てに行く行為、子どもたちだけで公園などで遊ぶなどが提示された。

条例改正案が可決すると、多くの世帯が条例違反となる可能性がある。条例を遵守する世帯は、日常生活に大きな支障がでることになる。そのため反対意見が相次いだ。

2018年4月に施行された埼玉県虐待禁止条例は、児童や高齢者、障害者の虐待の禁止に関して、各施策を総合的かつ計画的に推進するため、施設職員らに虐待防止研修を義務付ける全国初の条例である。今回は同条例の改正であった。なお、筆者の調査によると、条例名に「虐待」があるのは全国で50程度となっている。

議員提案政策条例の現状

本稿は、議員(議会)が条例を提案することを「議員提案政策条例」と簡単に定義しておく。

筆者は、議会は積極的に条例を提案した方がよいと考えている。その理由は、条例の提案は議会の大きな役割だからだ。

議会の役割は、一般的に①行政監視機能、②政策立案機能と言われている。本稿は、後者の政策立案機能に焦点を当てている。議員は条例案を議会に提案する権限を保持している。地方分権一括法以降、提案に要する議員数は「12分の1以上」に引き下げられ、少数会派でも独自の条例案を議会に提出しやすくなった。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り64%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。