新規事業は「作って売る」から「売れて作る」へ 発想の転換

医学・行政・ビジネスの観点から医療・ヘルスケア業界の事業戦略を考える本連載。医療・ヘルスケアビジネス領域では数多くの事業アイデアが出るが、「開発」に重きが置かれ「セールス」の視点が欠けていることも多い。持続的事業にするための手法を考察する。

年末や年度末に向けて、アクセラレーションプログラムやビジネスコンテストの審査員の依頼が増えてきました。経済産業省の主催する『ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト(JHeC)2023』も次回で8回目となりますが、ありがたいことに今回もビジネスコンテスト部門の最終審査員をさせてもらうことになりました。

ビジネスコンテストの審査員をしていると、面白い・魅力的なアイデアの発表を聞くことが多くありますが、実際にそれがビジネスとしてうまくいくかどうかはやってみないとわからないところがあります。今回は、そのような点もふまえて、「究極的には、こうできれば新規事業開発は失敗することがない」という理想の姿から、新規事業開発の進め方を考えてみましょう。

絶対に成功する新規事業の
条件とは?

究極、新規事業を始めたときに、その商品・サービスを買う顧客がすでに10社(10人)でも20社(20人)でもいればいい、というのが理想の姿です。また、ユニットエコノミクス(1顧客あたりの収益性)も確立していれば、それがスケールするように人や金の投資をすることが可能です。すなわち、「商品・サービスがすでに買われることがわかったうえで事業を始める」ことができればいいのです。これは例えば、医師がクリニックを開業するときに、開業前の医療機関で自分にかかっていた患者さんを新規開業のクリニックに連れていく(紹介していく)のと同じことです。開業後にクリニックに来てくれると思われる患者さんは新規事業でいえば顧客を抱えているのと同じことで、開業前に患者さんをたくさん抱えていればいるほど、開業後にそれらの患者さんが来て儲かっていくのが予想できます。事業を始める前からすでに大成功と勝負が決まっているというわけです。

では、どうすればこのような状態を作ることができるのでしょうか。一つは上述のクリニックの新規開業と同じように、「他で同業をしていて、その顧客をそのまま新しい事業に連れてくる」という方法です。例えば、サプリメント販売事業ですでに多くの顧客を抱えている中で、そのまま同じサプリメントの販売を違う会社に移すというケースがあるでしょう。ただ、新規事業は本来は「何もない」ところから事業を始めるため、このような状況は特殊です。では「同業をしていない」場合にどうしたら「すでに顧客がいる」という状態で事業を始めることができるのでしょうか?

図 「すでに顧客がいる」状態をつくるには

出典:原稿内容を元に編集部作成

新規事業開発の順番を
入れ替えてみる

通常の新規事業開発では、事業のコンセプトやビジネスモデルを考えた後に、プロダクトを開発し、そしてセールス(販売)を始めます。しかし、この当たり前のように思われている手順を変更することができれば、すでに顧客がいる状態をつくることが可能です。すなわち、プロダクト開発の前にセールスをする。「作って売る」のではなく「売れてから作る」のです。

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