在宅医療に特化し、持続可能な 「へき地医療モデル」を発信

へき地医療と言えば、1人の医師が自身の人生をなげうち、地域に身を捧げるイメージがある。しかし、愛媛県西予市の「たんぽぽ俵津診療所」では、誰か一人を犠牲にするのではなく、医師が疲弊しないシステムを構築。持続可能な医療体制をつくり、まちの活力向上にも寄与している。

永井 康徳(医療法人ゆうの森 理事長)

自宅で最期を迎えられる
医療体制を整えたい

「先生、診療所がつぶれてしまう。何とかしてほしい」――。2012年のある日、穏やかな宇和海に面する愛媛県明浜町(現西予市)俵津に住む男性が、松山市で在宅医療専門診療所「たんぽぽクリニック」を営む、ゆうの森理事長の永井康徳氏のもとへ助けを求めてきた。対象人口当時1200人あまりの公立の国保俵津診療所は、年間3000万円の赤字を出し続け、市町村合併のタイミングでの廃止が決まっていたという。

山から眺めた俵津地区。穏やかな宇和海に面する

「実は私は2000年にたんぽぽクリニックを開設するまで、その俵津診療所に5年間勤務し、地域医療に従事していました。退職の際には、別れを惜しむ多くの住民の方が見送りに集まってくれました。俵津は、私が在宅医療を志すきっかけをもらった地です。その診療所がなくなると聞き、私を育ててくれたまちのことを見過ごすわけにはいかないと思いました」と永井氏は当時を振り返る。

地域の人たちがその地を離れることなく、自宅で最期を迎えられる医療体制を、しかも医師へ負担をかけることなく実現するにはどうすればよいか。永井氏は考え抜いた末、2012年に国保俵津診療所の民間移譲を受け、「たんぽぽ俵津診療所」として新たに開業することになる。

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