震災から十年、国土強靭化の未来は 小此木八郎担当大臣に聞く

東日本大震災から間もなく10年。地震や台風などの大規模自然災害が頻発する日本にとって、国土強靭化や防災・減災への取り組みは最重要テーマだ。政府の構想や最新の取り組み状況について、小此木八郎国土強靱化担当大臣に聞いた。

小此木 八郎(国土強靱化担当大臣)

事前防災で国民を守る

――災害列島である日本における国土強靱化や防災・減災の重要性について、改めてお聞かせください。

我が国は地理的・自然的な特性から、多くの大規模自然災害による被害を受けてきました。東日本大震災を踏まえ、2013年に「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法」が制定され、政府は国土強靱化担当大臣を設置し、国土強靱化の推進を図ってきました。

東日本大震災後も、2016年熊本地震、2017年九州北部豪雨、2018年の西日本豪雨や北海道胆振東部地震、草津白根山噴火、2019年東日本台風、そして昨年は7月豪雨と、大規模自然災害が続いています。気候変動の影響で気象災害は激甚化・頻発化するとともに、近い将来は南海トラフ地震等の発生も見込まれています。

国土強靱化は、「事前防災」により国民の生命と財産を守る取り組みです。災害が起こる前に小さな投資をすることで大きな被害を防ぐことが非常に重要です。例えば2019年の東日本台風では、福島県阿武隈川の堤防決壊等による損失額は約7,000億円に及びましたが、もし事前に約1,300億円の対策工事を実施していれば損失は免れたという試算もあります。

私の地元は横浜市ですが、市内を流れる鶴見川ではかつて頻繁に氾濫が起きていました。住民の悲鳴を行政が拾い上げ、1980年に遊水池の整備計画が動き出し、2003年に運用が開始されました。遊水池の上に整備された横浜国際総合競技場は2019年のラグビーワールドカップで日本対スコットランド戦の舞台になりました。開催前日まで東日本台風の影響で浸水していたのに、遊水池などが効果を発揮し、翌日には水が引いて滞りなく試合が行われたのです。

悲鳴を上げている地域は全国に沢山あります。政府は2018年度から「防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策」として、2000カ所を超える河川の改修、整備を初めとしたハード・ソフト対策を実施してきました。緊急対策に対しては地方自治体等から「ありがとう」という声や、継続的な対策を求める切実な声を頂きました。

これらを踏まえて昨年12月には2021年度からの「5カ年加速化対策」(事業規模約15兆円)を閣議決定しました。新型コロナ対策とともに国土強靭化は国民の命に関わる大変重要なテーマであると考えています。

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